娘はベタベタと膝にのせ、息子はしつけと称して蹴る夫。母の第六感で子どもを守ると誓って離婚…彼女の痛恨のミスとは?
作家・ライターとして「現代のカップルが抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。現代に生きる誰もが抱えうるパートナーとの問題を浮き彫りにします。 今回お話を伺うのは、2人のお子さんを連れて29歳の時に離婚、それ以来40歳になる現在まで女手ひとつで働きながらお子さんを育てている祐子さん。 この11年間で受け取った養育費は2人分で36万円というので、そのご苦労がしのばれます。 祐子さんが幼いお子さんがいながら離婚に踏み切った理由は、胸の痛むものでした。 取材者プロフィール 祐子さん(仮名):40歳、営業職。29歳のとき、当時未就学の子どもを連れて離婚。 太郎さん(仮名): 45歳、SE。椎間板ヘルニアで仕事に支障が出ることも。
「夫は肉体関係に夢中になり、1年で結婚することに」
「元夫・太郎氏とは、友人が開催したバーベキュー会で出会いました。私は短大を出たあとテレホンオペレーターとして働いていて、女性の多い職場だったので出会いを期待していました。彼もSEという仕事柄、職場は男性が多くてバーベキュー大会を楽しみにしていたようです。環境が似てるね、と言って打ち解けました。 彼は客観的に見ればごく普通の男性だったと思います。中肉中背、笑顔は人懐こかったかな。あとから知る学歴も、勤めている会社も、平凡と言って差支えないと思います。特にすごく話がうまいということもないです。でも当時の私は、すぐに好感を持って大好きになりました。話しやすいし、がつがつしていないし、そういうところがいいなと感じたんです」 取材が始まると、元夫を「太郎氏」と呼んだ祐子さん。お付き合い中や結婚していた頃は親しみを込めて「たろちゃん」と呼んでいたけれど、今では冗談でもそんな風に呼びたくないし、元夫と呼ぶのさえも嫌なので、とのこと。 穏やかで優しい雰囲気の祐子さん。そんな彼女が、礼節を精一杯保ちながらも嫌悪感を隠せず、編み出した「太郎氏」という呼称に、夫婦のこじれた事情があるのだと感じました。 交際開始から1年弱で結婚に至ったおふたり。「祐子さんはお勤めになったばかりで、まだ22歳、迷いはありませんでしたか?」と不躾ながら尋ねると、裕子さんは声のトーンを落として答えてくれました。 「それが……彼は私と『そういうこと』をするのにすっかり夢中になって、すぐに同棲したいと言い出して。私が、両親の手前もあるし同棲はしたくない、と断ると、じゃあすぐにでも結婚しようと。そこで『そんなに私のことが好きなのね』となってしまったのが、私の若気の至りです」 かくして始まった結婚生活。それは最初から気になることが散見されるものでした。
佐野 倫子