競合ひしめく「XRデバイス」に挑戦するパナの勝算、アップル、Metaが“目指さない”産業特化型で市場に参入
今まさにXR業界は、かつてスマートフォンが台頭し始めようとしていた“スマホイノベーション前夜”を彷彿とさせる状況だ。 一方で“現在”という時間軸で言えば、巨額を投じているアップルやMetaも含め、“苦戦している”のが現状だ。 MetaのXRジャンルにおける累積損失は、創業者自身が舵を取る同社でなければ許容できないものと言えるし、アップルも事業立ち上げの初期段階とは言え、市場での存在感を示すには至っていない。
それでも各社が巨額投資を行うのは、“スマートフォン時代の次”で、プラットフォームを担うことを目指しているからだ。 とはいえ、パナソニックはプラットフォーム支配を狙うガリバーと新しい市場ジャンルを作り上げることを狙っているわけではない。 グローバルでニーズのある、ほかの解決策では代替できない領域に絞り込み、徹底して最適化することで、まだマスへの広がりが期待できない時期からノウハウと顧客へのプレゼンスの確保を狙っているのだ。
■“汎用”ではなくあえて“専用”に パナソニック システムネットワークス開発研究所の小塚雅之氏は、「自動車業界向けにデザイン/開発、製造、販売の各段階でのVR活用を提案し、大きな可能性を共有できていました。中でも“デジタルツイン(バーチャル設計・製造)”は今すぐに成立している領域です。この領域でライバルを圧倒する“必須と言えるVR機器”の地位を確立することを目指しました」と話す。 加えて、パナソニックグループは事業者向けに多くの営業チャネルがあり、自動車メーカーやハウスメーカーなど産業VRへとつながる製品ポートフォリオがある。当然ながら各メーカーの部門と深いつながりがあり、直接の提案を行える。
「設計と製造におけるデジタルツイン活用、特殊訓練の3分野はVRの効果が明確で代替手段が乏しいこともあり、短期では(汎用デバイスの性能や使い勝手が十分に上がるまでは)狙っていけると考えている」(小塚氏) 一方で産業向けだけでは量産数にも限界がある。そこで共同商品開発を行ったのがShiftallだった。 元々パナソニック資本だったShiftallは、コンシューマー向けメタバースのアクセストラフィックを、ほぼ独占している“VRChat”向け製品に特化した事業を行っている。