米国はうなぎ上りだったマンション価格が急落…不動産バブル崩壊から金融危機に至るリスク高まる
米利下げは年内に0.25ポイントを1回
米連邦準備理事会(FRB)は6月12日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、政策金利を7会合連続で据え置くことを決定した。最新の金利・経済見通しも合わせて発表され、想定では年内に0.25ポイントの利下げを1回、着手時期は大統領選後の12月になる可能性があるという。 【写真を見る】円安と物価高…「ハワイのホテル所有権」が日本で大暴落?
利下げの想定回数が3回から1回に減ったが、米株式市場はこれを好材料と判断した。「景気が底堅いうちに利下げが始まる」との期待から、代表的な株価指数であるS&P500種株価指数は同日、最高値を更新した。 強気ムードが支配している株式市場にとって、政策金利がより長くより高い水準にとどまる可能性があるというFRBの警告は、マイナス材料にならなかった形だ。 だが、金利の高止まりは、先行きが懸念されている不動産市場にとって打撃だ。
オフィスビルの評価額が急落
米国ではコロナ禍以降、在宅勤務が急速に普及したことなどが災いして、オフィス需要の不振が続いている。新築やリフォームされた高層ビルでは引き続き堅調だが、古い物件はテナント離れが進み、「空き」が埋まらない状況だ。 調査企業ムーディーズ・アナリティックによれば、米国のオフィスの今年第1四半期の空室率は19.8%と過去最高を更新した。 政策金利の上昇に伴う借り入れコストの上昇も重なり、全米各地のオフィスビルの評価額が急落しており、大幅なディスカウント価格で売却される事例が増えている。 特にニューヨーク市でこの動きが顕著だ。 米プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資企業ブラックストーンは今年に入り、2014年に6億500万ドルで購入したニューヨークのオフィスタワーを1億8600万ドルで売却する決定を行った。その後も買値の3分の1以下の売却が続いており、商業用不動産市場の不調が金融システムに与える悪影響の心配が広がっている。
地方銀行の次は大手銀行
現在、問題視されているのは地方銀行だ。地方銀行はここ数年、商業用不動産向け融資を急増させていたが、多くの場合、不動産の価値がピーク時の数分の一に落ち込んだ。 今年満期を迎える商業用不動産向け融資総額は推定4110億ドル(6月11日付ブルームバーグ)に上るが、延滞率の上昇に伴いFRBは警戒を強めている。市場では地方銀行のさらなる破綻も予測されている。 気になるのは、これまで被害が少ないと言われてきた大手銀行もリスクを抱えていると明らかになったことだ。直接の貸し付けは少ないものの、不動産投資信託(REIT)向けに多額のローンなどを行ってきたからだ。 大手銀行の商業用不動産へのエクスポージャー(投融資残高)は2022年第4四半期時点の3450億ドル(約54兆円)となり、2013年第4四半期(1090億ドル)に比べて3倍以上になっている(5月30日付ブルームバーグ)。