米国はうなぎ上りだったマンション価格が急落…不動産バブル崩壊から金融危機に至るリスク高まる
マイホーム獲得の負担は増すばかり
商業用不動産市場に潜むリスクが日に日に増大していることに加え、住宅用不動産市場にも暗い影が忍び寄っている。 リーマンショック後の15年間にわたって深刻な供給不足が続いたことから、米国の住宅価格は高騰を続けている。持ち家を維持するコストも2020年から26%増加(6月11日付ブルームバーグ)しており、マイホーム獲得の負担は増すばかりだ。 住宅ローン金利の上昇も追い打ちをかけている。 2019年以降に変動金利でローンを組んで住宅を購入した約170万人が今後、金利の上昇のせいで返済に窮する事態に陥ると予測されている(5月30日付ブルームバーグ)。最初は低利だったが、その後の金利の上昇で焦げ付きが急増した、かつてのサブプライムローンの破綻騒動を彷彿とさせる。 さらに気がかりなのは、2010年代以降、米国で急拡大した集合住宅(マンション)市場が変調をきたしていることだ。
マンション価格が急落
米国政府によれば、建設中の住宅物件は4月時点で過去最高水準の161万戸で、このうちの6割をマンションが占めるという。その多くは賃貸で、主に機関投資家やREITが投資用に保有しており、日本のように居住者が一室を購入するケースはまれだ。 機関投資家らが推奨するマンション投資は30%のリターンが保証されていたことから投資マネーが殺到し、市場は過熱状態となっていた。だが、うなぎ上りだったマンション価格が、金利上昇のあおりを受けて急落している。 マンション向け融資残高は昨年末に約2兆2000億ドル(約345兆円)に達した。この額は、焦げ付きが顕在化しつつある商業用不動産向け融資残高の6割に匹敵する。 FRBによれば、昨年第4四半期の価格はピーク時の2022年第2四半期に比べて2割下落したが、足元の価格は市況の悪化を十分に反映していない可能性が高いという。 約560億ドルに相当するマンション物件が支払い不能に陥るとの指摘があり(6月9日付ブルームバーグ)、マンション向け融資はオフィス向け融資以上に危険だという認識が高まりつつある。 依然として株価が好調な米国だが、不動産市場におけるバブル崩壊が金融危機を引き起こすリスクがますます高まっているのではないだろうか。 藤和彦 経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。 デイリー新潮編集部
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