日銀・黒田総裁会見6月15日(全文1) 7月の展望レポートに向け「物価」議論
直近のCPIでは物価上昇の勢いが弱くなっているが?
時事通信:では2つ目、お聞きします。物価動向についてなんですが、直近のCPI等を見ると物価上昇の勢いが弱くなっている、伸びが縮小しているという状況にあります。現状の物価認識と、物価上昇に向けたモメンタムがまだ維持されているのかということと、目標とする2%にいつごろ到達すると黒田総裁はお考えなのか、お願いします。 黒田:ご指摘のように、わが国の消費者物価の動向を見ますと、このところいわゆる除く生鮮食品、あるいは除くエネルギーのいずれも前年比伸び率が幾分、縮小しております。これについては春先までの円高の動きが耐久消費財などの価格下押し圧力として作用したほか、振れの大きい宿泊料の下落などが影響していると考えられます。もっともサービス業を中心に企業が賃金コストの上昇を販売価格に反映させる動きも見られており、外食などでは前年比プラス幅が着実に拡大しております。このようにマクロ的な需給ギャップの改善を背景に企業の価格設定スタンスは積極化する方向にあり、2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されていると考えております。 なお、先行きの物価見通しについては7月の展望レポートを取りまとめる次回の金融政策決定会合において、あらためて政策委員の間で十分に議論していくことになるというふうに考えております。
現行の金融緩和策が地方金融機関に与える“副作用”は?
時事通信:幹事社から最後の質問です。副作用についてお伺いします。先月ですか、発表された18年3月期の地域金融機関の決算を見ると、一部赤字行が出るなど非常に厳しい決算になったかと思います。現行の緩和政策が地域金融機関に与える影響について、総裁の現状認識と、これが今後金融システム全体に悪影響を及ぼすことがないのかどうか、併せてお願いします。 黒田:確かに長短金利操作付き量的・質的金融緩和の下で、わが国の長期金利は安定的に推移して、貸出金利も極めて低い水準となっております。これが貸し出し利鞘の縮小などを通じて、金融機関の収益力低下につながりうることは承知をしております。また、そうした収益動向が金融機関の経営体力に及ぼす影響は累積的なものであるために、低金利環境が長期化すれば金融仲介が停滞方向に向かうリスクや、金融システムが不安定化するリスクがあることにも注意が必要だというふうに考えております。 もっとも、わが国の金融機関は地域金融機関を含めて、充実した資本基盤と潤沢な流動性を有しております。また短観など各種調査を見ましても、金融機関の貸し出し態度は引き続き積極的であります。こうした点を踏まえますと、現時点で収益の悪化に伴う金融仲介機能への大きな問題は生じておらず、金融システムの安定性もしっかりと確保されているというふうに考えております。いずれにしてもこういったことについては引き続き十分注視していく所存でございます。 時事通信:幹事社からは以上です。各社、どうぞ。 黒田:はい、どうぞ。