「世界にたったの2台、50億円以上の名車も...」《世界的デザイナー》ラルフ・ローレン氏の愛車コレクションを撮影した日本人フォトグラファーが見た「名車の本質」
ファッションと車の関係性
「どの車も厳重なセキュリティーの中、常にメンテナンスされていました。いつでも走れる状態にありましたが、とてもとても素手で触れるような雰囲気ではありませんでした」 さらに秦氏いわく車の撮影には常に細心の注意が求められるという。 「撮影に応じて照明を使うんですが、万が一でも機材が倒れて、車に傷がついては冗談では済まなくなってしまいます。なので撮影の最中でもライトやスタッフの動きはいつも気にしています」 メディアのインタビューでは「愛車からインスピレーションを受ける」と語っていたラルフ・ローレン氏。コレクションを撮影して見えたのはデザイナーとしてのスタンスだった。 「機能のみならず、究極のデザインに宿るユーモアや優雅さのようなそれぞれの車が持つ雰囲気と乗る人との相性は、古くからの服作りと着る人の関係にも似ているのかもと思いました」 『ENGINE』では数々の車の撮影を続けてきた秦氏だが、今年11月には集大成とも呼べる写真集『ENGINE ERA』をDIAMOND HEADSより発刊。これまで撮りためてきたコレクションの中から珠玉の114台をセレクトし、総ページは300ページ以上にものぼる。
誕生から100年
「写真集のお話を頂いたのは4年ほど前でした。私がページの撮影とは別で写真を撮っているのを知っていたアートディレクターの横山修一さんから『そろそろ形にしない?』と言ってもらったのが始まりです。そこから膨大な数のデータを引っ張り出し、DIAMONDHEADSの優秀なデザインチームの方々とともに誌面作りに入りました。 本では頭文字順にメーカーごとに振り分けて、雑誌では紹介できなかった詳細なスペックも載せてもらっています。写真はおよそ15年分かけて撮影したものですが、約1世紀の『ENGINEの時代』が表現された写真集に仕上がっています」 世界初のガソリン自動車が誕生して100年以上。なぜ、車は人々を魅了し続けるのか。秦氏はその理由について「文化そのもの」と語る。 「車はフォルムや質感に特徴があるものもいれば、顔が愛らしい、あるいはお尻が色っぽいクルマもいます。旧車はデザイン性が高く、最近の車は機能美があり、どんな車にも魅力がある。車はその時代の美しさを映し出すまさしく塊で、文化そのものだと考えます。車はその時々に生きる人たちの美意識が強く反映されているからこそ、私たちを惹きつけるものだと思います」 自身も子供の頃から車好きとして過ごしてきたという秦氏。つづく後編記事『「この見た目がカッコいいでしょ?」と語りかけてくるような...《名車を知り尽くしたフォトグラファー》が憧れを禁じ得ない「特別なクルマ」の正体』ではそんな秦氏が魅了され、今なお追い続けている『特別なクルマ』について詳しく紹介する。 写真集の発刊を記念して、来年1月18日(土)から2月18日(火)まで、カフェ併設ガレージ Kitasando garage / Flip Flip Coffee Supplyで、オリジナルプリントと写真集を展示販売。Kitasando garageがレストアしたヒストリックカーの展示もあり、クルマ好きには必見のイベントとなっている。 日時: 2025 年 1 月 18 日(土)~ 2 月 18 日(火) 8:30-18:00(土日祝日は 10:00-18:00) 場所: Kitasando garage / Flip Flip Coffee Supply 東京都渋谷区代々木 1 丁目 21-5
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