【兵庫県知事選挙2024】ネット上にあふれた「真実」に寄せられた民意!斎藤元彦氏を勝利に導いたネット世論をYouTubeデータからみる
第三者の発信、ネットニュースが存在感
チャンネルごとの再生回数をみても、「斎藤氏の支援」を掲げて立候補していた立花孝志氏の個人チャンネルが80本近い兵庫県知事選関連動画を公開して合計約1377万回でチャンネル別の再生数ではトップでした。立花氏や同氏が党首を務めるNHKから国民を守る党に関する切り抜き動画を投稿していたチャンネルが続き、合計の再生回数がそれぞれ1000万回を超える。立花氏が「既得権側」や「反斎藤派」と戦いながら斎藤氏の支持を呼び掛けている様子が拡散されました。 こうした「既得権」には大手メディアも含まれました。選挙前にマスコミが斎藤氏の「パワハラ」や「おねだり」を一斉に報じていたことを批判し、斎藤氏を擁護する別の見方や論拠を「真実」だとして発信する内容の動画も人気を集めます。既存の大手マスコミへの不信感が漂う中で、「真相深入り! 虎ノ門ニュース」や「ReHacQ-リハック-【公式】」などの解説動画・インタビュー動画が多く見られました。 立花氏の存在感が際立っている一方で、他候補の清水貴之氏や稲村和美氏、大沢芳清氏が立ち上げたチャンネルで投稿している動画は再生回数が伸びず、第三者が公開している動画の再生数が多いのも特徴的です。
「真実」に吸い寄せられた民意
今回の兵庫県知事選挙では、国政政党のほとんどが地方組織の支援や「自主投票」などにとどまりました。既存の政党支持を中心とする組織固めが勝敗を分けてきた従来の知事選と比べると異色とも言える構図の中で、無党派層が一層鍵を握った中でYouTube上には次から次へと流れてくる「真実」や「真相」と銘打ったタイトルの動画が衆目を集めました。 そもそも選挙の発端となった内部告発文書の問題は兵庫県や兵庫県議会による調査での決着を見ない中で選挙戦に突入。「真実」の需要が高かったのは、公的な機関が一定の客観的な事実や調査に基づく「真実」を提示できなかったことと無関係ではないのではないでしょうか。ただし、ネット上にあふれた「真実」とは、YouTube上で類似・関連動画がどんどんおススメされる「フィルターバブル」の中で、それぞれが信じやすい「真実」のみが増幅されていく性質のものでもありました。 有権者が判断に頭を悩ました中で、期日前投票の割合は過去最高となり、投票率は前回よりも14ポイント増の大幅増となったのは光明でした。まずはこの選挙戦を戦った候補者と、この選挙に対して意思を示した全ての有権者に敬意を表します。しかし、今後の県政運営の正常化に向けてはまだ道筋がついていません。民意の結果を受けて、知事だけではなく職員、議会などの関係者各位が兵庫県政をどう進めていくのかが問われています。そして、その経過を見守ることは民意側の責任でもあります。