東京芸大山岳部の山小屋、「造形の模範」は倒壊の危機 落雪でバルコニーは破損、修復へ支援を募る
国の登録有形文化財になっている東京芸術大山岳部の山小屋「黒沢ヒュッテ」(長野県大町市平)の老朽化が激しく、倒壊の危機にひんしている。長年の風雪で屋根や柱は傷み、2021~22年の冬には落雪で2階のバルコニーが損壊した。山岳部と協力してヒュッテを管理する一般社団法人「上野山の会」(東京)は、ヒュッテを残し、学生と住民の交流の場としても活用したい考えで、修復のための寄付を学内外から広く募っている。 【写真】落雪のため破損した黒沢ヒュッテのバルコニー
黒沢ヒュッテは鹿島槍スキー場のゲレンデ脇にあり、1960年建築。豪雪に埋もれる1階部分はコンクリートブロック造り、2階は木造で、建築面積98平方メートル。当時の学生やOBから設計案を募り、山岳部元顧問で建築学者の山本学治(1923~77年)が監修した。片流れの屋根が特徴で、2018年に「造形の規範となる建物」として国の登録有形文化財になった。
歴代の山岳部員が60年余にわたって維持管理を担ってきたが、新型コロナ下で部活動が停滞。バルコニーの損壊も人の手が入らなくなったところで起きた。屋根のゆがみも目立ち、放置すれば倒壊する可能性もあるという。
ヒュッテは山岳部以外の学生も利用。周囲の自然をスケッチしたり、音楽を演奏したりして過ごしてきた。「愛着のあるヒュッテを残したい」と山岳部のOB会が中心となり、昨年12月に一般社団法人として上野山の会を設立。今年4月に募金を始めた。目標額は2千万円で、まずはバルコニーを修復し、次いで屋根をかけ替えたいとする。
ヒュッテを地域に開放し、学生と住民をつなぐ試みとして、今月11、12日に木製スプーンを作るワークショップ(参加型講習会)や周辺を散策する会を開催した。9月には学生らのアート作品の発表会を開く計画だ。
上野山の会理事を務める東京芸術大特任助教の君塚和香さん(54)は、寄付の呼びかけや交流の催しを「ヒュッテを学生や地域の方の憩いの場とする第一歩にしたい」と意気込んでいる。