【陸上】インターハイ・男子800mで落合晃が1分44秒80 インターハイ男子初の日本新V
福岡県・博多の森陸上競技場で7月28日から行われたインターハイ、大会4日目。男子800mで落合晃(滋賀学園高3年・滋賀)が1分44秒80の日本記録を樹立。会場は大歓声の渦に包みこまれた。
尽きることのない向上心でさらなる境地へ
男子800mで特別な記録が生まれた。1分45秒82のU20日本記録&高校記録を持つ落合晃(滋賀学園高3年・滋賀)が1分44秒80の日本新記録を樹立したのだ。 「日本選手権では、パリ五輪を目指すなかで狙っていた標準記録の1分44秒70を出せませんでしたが、1分44秒台をインターハイで出せたことは率直にうれしいです」と落合。今季日本高校記録を2度更新し、日本選手権では独走Vを飾っており、満を持しての快挙だった。 前人未到の記録は、ハイペースと競り合いが引き寄せた。 落合は決勝でもいつもどおりに「自分が引いて勝ち切る」というレースプランを描いていた。しかし、菊池晴太(盛岡四高2年・岩手)が猛然と飛び出し、落合は「無理をして前に行く必要はない」と判断。菊池について400mを51秒台で通過し、直後に先頭に立った。 準決勝で今季唯一、落合が先着を許したフェリックス・ムティアニ(山梨学院高2年・山梨)が食らいつき、600mを1分18秒29で通過。残り200mでムティアニが落合の前へ。落合は慌てず追走し、残り50mで逆転。ラスト100mを13秒06で駆け抜け、大会2連覇を最高の記録で達成した。 「2連覇が懸かっていたので、絶対に負けられない気持ちがありましたし、タイムは気にしていなかったのですが、競ったらいいタイムが出るという手応えが留学生と走った準決勝からあったので、ここで負けたら絶対にダメだという気持ちでした」とスパート勝負を振り返った。 スタートから独走するのが今季の落合のスタイルだが、今回はついていく流れになり、残り100mでは先行されていた。動揺してもおかしくない展開だが、落合は落ち着いていた。「久しぶりにごちゃごちゃしたレースになりましたが、前に出られたときに焦ってしまうと力が入って、さらに前に行かれてしまうということが頭にあったので、冷静に走れました」。どんな状況でも常に冷静さを保てたところに勝因と新記録のカギがあった。
本気で目指したパリ五輪出場は実現しなかったが、「取り組んできたことは間違っていなかったし、パリ五輪に出場したいと挑戦してきたことがこの結果につながった」と胸を張る。そして、「今回はひとり旅じゃなく、仕掛けたり仕掛けられたりがあって楽しめました」と中距離レースの醍醐味を満喫することができた。 日本記録を更新しても、落合は美酒に酔わない。「世界にはまだまだ上の人がいます。1分44秒で満足せずに、43秒、42秒に向かって、どんどん行ってやるぞという気持ちです」。尽きることのない向上心をエネルギーにして、落合は新たな境地へと走り出している。
陸上競技マガジン編集部