仏LVMH成功の鍵はアルノー会長の「先見の明」 誰も気づかない好機を捉える力
アルノー会長は中国への進出でも「先見の明」を発揮
アルノー会長は授賞式で次のようにあいさつした。「社内で言っているのは、当社は短期的な利益の拡大を目指しているのではなく、収益性は結果だということだ。当社が望んでいるのは、可能な限り最高水準の品質で最も美しい製品を作ることだ」 アルノー会長がLVMHの世界的な展開を中国に初めて拡大したのは1990年代のことだった。それ以降、同国では消費者の購買力が拡大し、同社の売上高の飛躍的な伸びにつながった。中国は現在、LVMHにとって最大の市場であり、同社の昨年の売上高の約34%を占めた。それに次ぐ市場は、売上の26%を占める米国だ。 LVMHを世界的な高級ブランド帝国へと成長させたことにとどまらず、アルノー会長は近年、テクノロジー業界への投資にも乗り出している。同会長一族の持ち株会社フィナンシエール・アガシュは、米動画配信大手のネットフリックスや中国のネット大手「字節跳動(バイトダンス)」などに投資するベンチャーキャピタル企業アグラエベンチャーズを支援しているのだ。 アルノー会長は、「積極的な株主一族は、企業にとってすばらしい資産だ。というのも、そうした家族は安定性や戦略的な選択肢の継続性のほか、実行する上での絶え間ない管理や長期的な展望をもたらすからだ」と述べるなど、支配株主の一族が積極的に事業に関与することで、企業に安定性と継続性がもたらされると考えている。この信念を反映し、同会長の5人の子どもは全員LVMHの事業に携わっている。 アルノー会長の長女デルフィーヌ(49)は、ルイ・ヴィトンに次いでグループ2位の売上を誇るクリスチャン・ディオール・クチュールの会長兼CEOを務めている。長男のアントワーヌ(47)は、LVMHグループ全体のイメージと環境を担当する責任者で、一族の持ち株会社クリスチャン・ディオールSEの副会長兼CEOでもある。LVMH傘下で米ニューヨークに拠点を置くティファニーで4年間、上級幹部として同社の刷新に取り組んだ次男のアレクサンドル(32)は今月、モエ・ヘネシーの副CEOに任命されたばかりだ。三男のフレデリック(29)は、一族の持ち株会社フィナンシエール・アガシュを率いており、末っ子のジャン(26)はルイ・ヴィトンの時計部門で責任者を務めている。
Jonathan Burgos