ロシア・中国・イランの選挙干渉加速、偽動画や陣営ハッキング…選挙後に暴動あおる可能性も
結果への抗議「あおり」警戒
【ワシントン=池田慶太】11月5日投開票の米大統領選を控え、ロシア、イラン、中国の3か国による選挙干渉の動きが加速している。SNSで偽情報を広め、米国内の分断や対立をあおる手法が共通する。米当局は選挙後も悪意ある活動が続くとみて警戒を強めている。 【図解】米大統領選への干渉を強める3カ国の主な狙い
SNSで拡散
10月末、ハイチ移民と称する男性が激戦州・ジョージア州で複数の身分証を使い、州内の二つの郡で民主党のハリス副大統領に不正に投票すると「告白」する約20秒の動画がSNS上で急速に広まった。
その後、動画はロシアと関連のある人物が作成した偽物だったことが米当局の調査で判明した。意図的にハリス陣営に打撃を与えて共和党のトランプ前大統領を後押しする思惑だったとみられる。米国家情報長官室や連邦捜査局(FBI)などは11月1日に共同声明を発表し、「国民の分裂をあおるロシアの広範な取り組みの一環だ」と強く非難した。
数日前には、他の激戦州・ペンシルベニア州で郵便投票用紙を投票所職員が破棄する様子を映したとされる動画が拡散し、米当局によってロシアの「捏造(ねつぞう)」と判明したばかり。投票日が近づくタイミングで選挙不正をにおわす行為が相次いでいる。
思惑それぞれ
人工知能(AI)などで作成した偽情報をSNSで大量に流し、世論を誘導しようとする点はイランや中国も一致する。「我々は3か国から多方面にわたり猛攻を受けている」。米司法省高官は10月、CBSテレビのインタビューで選挙干渉の激しさをこう表現した。
思惑は各国で異なる。ロシアはウクライナ軍事支援の削減を掲げるトランプ氏の当選を支援しているのに対し、イランはトランプ氏を標的にしている。イランの場合、トランプ政権当時にイラン革命防衛隊の司令官が米軍に殺害されたことへの報復の意味合いが強い。米当局は9月、イランのハッカー集団がトランプ陣営から情報を盗み、民主党側に一方的に送っていたとして3人を起訴した。
中国は特定の大統領候補を標的にせず、反中派の連邦議会議員候補を落選させることに力を注いでいるとみられる。一方で中国と関係のあるハッカー集団がトランプ氏やハリス陣営の選挙スタッフらの携帯電話をハッキングしようとした疑いが持たれている。