ものを選ぶときに口ずさむ「どれにしようかな」に続く言葉は? 高校生が調査、面白くないと思ったら…研究者も評価する驚きと感動の結果が
部内でも違いが
部内でも親しんできたフレーズに微妙な違いがあった。「どれにしようかな 天の神様の言うとおり」までは4人とも共通だが、酒井さんは「鉄砲撃ってばんばんばん」と続く。2年の玉木楓さん=中野市=は「あべべのべ」と覚えていた。「鉄砲―」は聞いたことがなかった玉木さん。「思ったよりバリエーションがある」と興味を持った。
県国語国文学会の紀要にも掲載へ
より多くのデータを集めようと、昨年12月と今年1月、同校の当時の生徒(計488人)に調査を実施。紙やオンラインで、性別や出身中学、自分が覚えている「どれにしようかな」に続く言葉などを答えてもらった。中野市内全7小学校の4年生(計320人)にも同じ質問をして、中村教諭のデータと合わせて計889人分が集まった。結果は部誌「翔 第20号」で発表したほか、来年発行の県国語国文学会の紀要に掲載される。
違いはいつ生まれたのか
部員の関心は地域差以外にも広がった。歌の原曲は何か、いつ生まれたのか―。まずは時代を特定しようと「鉄砲―」の「ばんばん」という擬音語に着目。「昔からの銃声の擬音は『どん』ではないか」と考え、「ばん」が使われ始めた時代を調べようと専門書や研究論文をめくったが、答えは見つからなかった。
言葉のルーツは?
言葉のルーツも気になり、話し合いを重ねた。「あべべのべ」は「赤いべべ(着物)からきているのでは」「『アッカンベーのべ』が短縮されたのではないか」と推測。「赤白黄色」は童謡「チューリップ」の「並んだ 並んだ 赤白黄色」との歌詞を連想させるという意見もあった。
「奥が深かった」
「歌詞の違いがどこで生まれたのかを考えて、育ってきた環境の違いなどにも目を向けたのが面白かった」と2年の岡村采和さん=須坂市。話し合いの中で自分の考察とは違う考えを聞き、「奥が深かった」と振り返る。
方言研究者も「さらに広がる研究」と評価
方言研究者で伊那西高校(伊那市)教諭の出野憲司さん(61)は「いろいろな年代の人に聞けば、さらに広がる研究」と評価。「生徒が興味を広げ、新しい発見をしていったことは刺激的かつ今後につながる経験」と話した。
地域に関わり研究する力
調査は、興味深い結果と謎、探究の面白さを残した。文芸部は現在、2、3年のみで全員で4人。1年生をはじめとした部員を募集中だ。今後も同じような規模で調査するかは新入部員の有無にもよる。酒井さんは「文芸部も地域に関わり、研究する力があるとわかった。経験を生かしていきたい」と話している。