なぜ赤ちゃんは人の顔をジーッと見るのか…生まれて間もない乳児の脳内で起きているすさまじい発達
■ミラーニューロンの役割 このように考えると、ミラーニューロンは、自分の運動予測機構を使って、他者の運動(の意図)を予測する機構だと考えられる(図表4)。現在、ミラーニューロンシステムの活動は、自分の運動予測と他者の運動認識、この両方の予測符号化という枠組みで説明されている。 運動と聞くと手足の運動を思い浮かべがちだが、興味深いのは、他者の声を聞いているときでさえ、自分の舌や顎、唇などの動きを処理するミラーニューロンが働くことだ。 そして、発語の習得にもミラーニューロンが関わっている。さらに、他者の動作であれば視覚から、言語(音声)であれば聴覚から入力し、それらを自己の運動を通じて認知している。同時に認知することで、言語の「動詞の獲得」につながっていくのだ。 ---------- 乾 敏郎(いぬい・としお) 京都大学名誉教授 大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了。京都大学文学博士。京都大学大学院文学研究科教授、情報学研究科教授を経て、現職。日本認知科学会フェロー、日本神経心理学会名誉会員、日本認知心理学会名誉会員、日本高次脳機能学会特別会員。専門は認知神経科学、認知科学、計算論的神経科学、発達神経科学。 ---------- ---------- 門脇 加江子(かどわき・かえこ) スクールカウンセラー 立命館大学文学部で実験心理学を学び、追手門学院大学大学院心理学研究科で臨床心理学を修める。臨床心理士、公認心理師、保健師、看護師。脳と身体の関係を焦点に、児童や成人のカウンセリングに従事。専門は臨床発達心理学、メンタルヘルス。 ----------
京都大学名誉教授 乾 敏郎、スクールカウンセラー 門脇 加江子