「RMK」や「スリー」の立役者、石橋寧が化粧品業界に提言 Vol.2「なぜメイクアップカテゴリーを軽んじる?」
――:「ディオール」はルージュでさえグローバルリサーチをした上でメイクアップ クリエイティブ&イメージ ディレクターを務めるピーター・フィリップス(Peter Philips)がシェードを設計しているので、ローカルで強さを発揮しているのは納得がいきます。
石橋:6~7年前ごろ、「スリー(THREE)」が成長していく過程でタイ限定カラーを作ったんです。タイ国内で17店舗程まで拡大し、限定カラーを作ってもなんとかいけると判断し、タイの代理店に提案したらすごく喜ばれた。なぜならそんなことをするブランドが他になかったから。そしてタイ側と相談しながら買取を条件に作って販売したら大ヒットし、翌年も作って欲しいとの依頼もあった。本来ならばそれを続ければよかったんですが、僕はその頃「アンプリチュード(AMPLITUDE)」と「イトリン(ITRIM)」を作ることに集中していて、引き継ぎがなされなかった。これも、日本企業特有の採算ベースの考え方ですね。インドやASEANはモンスーン地帯、早い話が日本同様年中ほとんど蒸し暑い。でも肌色が違うからファンデーションのシェードも変わってくる。ファンデーションの色が変われば、そこにのせる口紅やアイシャドウの色も変わる。メード・イン・ジャパンの高いクオリティーで、それぞれの国の肌色や嗜好に合ったものを提案すれば、絶対に売れると思う。それをせずに「グローバル」なんて目指さないほうがいい。日本の商品を輸出するだけで売れていたのは10年、20年前の話で、時代は変わってきている。でもそれに対応しきれていない企業が多いんですよね。
――:グローバル視点で考えれば、メイクアップが勝機になり得る。
石橋:中国のマーケットは大きいけれど、政治が絡むと方針がいきなり変わるからリスクが高い。一方インドは人口14億人の民主主義国家。これからはインドとASEANのマーケットを同じアジア人として狙うべきだと思う。インドの人に会ったら「メード・イン・ジャパンそのものがブランドで高く評価されている。あとはインド人に合うように色やパッケージをローカライズさせたら売れますよ」と言われました。インドネシアは日本と嗜好が似ている。シンガポールや香港は人口が少ないので厳しいけれど、タイは約7000万人、ベトナムは約1億人、フィリピンも約1億人、それくらいの需要はある。国は間違いなく成長しているし、若い人も多い。各国のニーズに合わせた商品を出していけば、存在感を出していけるはずだと思います。