「2億4000万を騙し取る」も有罪にできず…地面師グループの「緻密な計画」を暴くべく奮闘する”警視庁捜査2課”の「苦悩」
Netflixドラマで話題に火が点き、もはや国民的関心事となっている「地面師」。あの人気番組「金スマ(金曜日のスマイルたちへ)」や「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映され、講談社文庫『地面師』の著者である森功氏がゲスト出演した。同書はすべて事実を書いたノンフィクションであり、ネトフリドラマの主要な参考文献となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションであるドラマよりも、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むほうが参考になるだろう。 地面師たちはどうやって不動産を騙し取るのか。森功著『地面師』より、抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第65回 『首謀者が逮捕されても、「地面師詐欺」事件の全貌解明とはならず…犯行グループの“半分以上”が「お咎めなし」だった驚きの理由』より続く
2課のリベンジ捜査
本書の冒頭に書いたとおり、2016年11月末、警視庁捜査2課は売り出し中の地面師、喜田泰壽をリーダーとする地面師4人組を逮捕した。しかし、勾留期限の晦日を迎えて起訴を断念せざるをえず、地団太を踏んだ。 「別件を探せ、必ずあるはずだ」 捜査2課長の檄が飛んだ。その言葉どおり、年が明けると、喜田に狙いを定めて捜査を続けた。その捜査の結実が、港区南麻布の不動産詐欺事件だ。 喜田は13年1月に死亡した地主のなりすましを仕立て、1年後の14年2月、南麻布の土地およそ100坪とマンションを神奈川県綾瀬市の会社社長に2億4000万円で売り払っていた。なりすまし役がパートナーの中村美佐江だ。喜田たちは再び逮捕された。 「喜田は住民票を偽造して中村に持たせ、弁護士を付き添わせて売買契約に臨んだようです。その詳細を中村から聞き出し、喜田の逮捕にこぎ着けたのでしょう。今度は逃がさない、という2課の執念が実った事件ではないでしょうか」(警視庁捜査幹部) 立ち会った弁護士の責任も追及されたが、すでに16年12月には死亡しており、刑事事件としての立件は見送られた。
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