「2億4000万を騙し取る」も有罪にできず…地面師グループの「緻密な計画」を暴くべく奮闘する”警視庁捜査2課”の「苦悩」
偽造ではないニセ印鑑証明
複雑怪奇な地面師詐欺の捜査は、概して難航を極める。捜査が成就した地面師詐欺のほうがむしろめずらしい。これまで見てきた港区新橋駅前、渋谷区富ヶ谷、世田谷区中町などの事件も、たしかに警視庁は捜査に着手している。だが、思うように進まず、犯行グループの摘発に手間どってきた。 たとえば中野区弥生町の事件もそうだ。地下鉄丸ノ内線中野新橋駅から5分ほど歩くと、その大地主の家がある。現地に行くと、広い敷地に、古ぼけたぼろぼろの民家が鎮座している。敷地面積1709・3平米(517坪)、建物は1967年8月に改築された木造瓦葺2階建てで、延べ床面積は1389・9平米もある。だが、立派な門の奥に広がる庭の樹木は伸び放題で、まるで荒れ寺のような風情なのだ。 近所の人に聞くと、家主の春山信夫(取材当時68歳=仮名)は、ここら一帯の地主の息子として生まれ育ったという。たしかにこの周囲を歩くと、同じ姓の表札が多い。おそらく親戚なのだろう。が、その春山姓の何軒かの家を訪ねても、「うちとは付き合いがないのでよくわからない」という返答ばかりだった。 当の信夫は結婚したあと1979年8月、この517坪とその敷地に建つ屋敷などの不動産を相続した。現在はインターフォンも鳴らない。家の中を覗くと、古新聞がうずたかく積まれ、住んでいるような気配もない。隣近所の住人たちは時折、当人の姿を見かけるとも言うが、まさしく地面師たちに狙われそうな物件に思えた。
森 功(ジャーナリスト)
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