第二十九回<特別編>「抗う人」でありたい理由――石川雅規×坂口智隆 対談 前編/43歳左腕の2023年【月イチ連載】
2023年シーズンを終えて通算185勝。球界最年長選手の「小さな大投手」石川雅規に密着するこの連載。今年最後を飾る特別編は、22年シーズンまでヤクルトでともにプレーした野球評論家の坂口智隆氏に、200勝へと歩みを止めない43歳の凄みに迫っていただいた。だれからも慕われ、言葉の力を信じるところも二人の共通点。それぞれの名言が紹介された書籍を互いに読んだという二人だからこその深い話が展開された。2日連続シリーズの前編は、二人の出会いや、「抗う」ことについて[構成・長谷川晶一]。 【選手データ】石川雅規 プロフィール・通算成績
「石川さんは、ファンが想像しているまんまの人」(坂口)
――坂口さんがヤクルト入りした2016年シーズンから、お二人の本格的な関係が始まりましたが、それ以前に接点はあったのですか? 石川 交流戦での対戦はあったけど、最初にグッチとしゃべったのが2008年のゴールデングラブ賞の表彰式でしたね。なんか、「めっちゃ怖そうだな」って、勝手なイメージを持っていたんだけど、明るく「おはようございます!」、みたいな感じだったよね。 坂口 僕が覚えているのは、オリックス時代に交流戦で対戦したときのことです。インコースにシュートを投げられて、詰まったショートフライかレフトフライでした。左投手と対戦するときは、完全にライトに引っ張る意識なんですけど、意識はライト方向なのに打球はどん詰まりで反対方向に飛んで(笑)。このとき僕は一番バッターだったので、ベンチに戻ってから、「球速いぞ、あの人。(スピード)ガンは見ないほうがいいぞ」って話したことを覚えてますね。 石川 2016年から一緒にプレーすることになったけど、やっぱり、「めっちゃ怖そうだな」ってイメージはあったかな。「気軽にグッチって呼んでもいいのかな?」って(笑)。 坂口 よく「怖そうだ」って言われるんですけど、きっと外見のせいですよね。でも、そればかりは自分では変えられないので(笑)。 石川 よく言われることだけど、グッチの場合は「昭和の匂いが残る人」っていうイメージがピッタリだったよね。すごく野球に真摯だし、後輩思いでありながら、先輩もきちんと立てる。すぐに、「おっ、全然怖くない、いいヤツじゃん」って感じたことは覚えているな。 坂口 嬉しいですね。でも、僕も最初はちょっと怖かったんです、石川さんのことが。 石川 えっ、どういう点が? 坂口 僕よりも、学年が5つも上だし、すごく優しそうなイメージがあるけど、「実は裏ではピリピリしているんじゃないか?」って(笑)。でも、全然そんなことはなくて。きっと、ファンの方が想像している石川さんのまんまだと思います。