【坂口正大元調教師のG1解説】バーレーンからとんぼ返り、運を呼んだ団野騎手の姿勢
<坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼> <マイルCS>◇17日=京都◇G1◇芝1600メートル◇3歳上◇出走17頭 騎手の本分とは何か。騎乗依頼を受けて、競馬に乗り、能力を発揮させる。ソウルラッシュを勝利に導いた団野騎手の熱い姿に、改めて考えさせられました。 その団野騎手は、金曜の夜中には遠く離れたバーレーンで騎乗していました。とんぼ返りしてこの日は京都1Rから。依頼やチャンスがあれば、たとえスケジュールがギリギリでも乗りに行く。そして、全力で馬を追う。それこそが若さです。最近は若手騎手の残念なニュースをよく目にしますが、騎手の本分とは何かを今一度、考えるべきでしょう。未来ある、伸び盛りの若い人たちが免許を返上したり、チャンスを失うなんてもったいない、と私は思います。 話がそれましたが、団野騎手の姿勢が“運”を呼び込んだのは間違いありません。4コーナーの位置はブレイディヴェーグのすぐ外。直線に向いて前が壁になったブレイディとは対照的に、ソウルの前は見事に開きました。一気に追って、一瞬で抜ける。惜敗ばかりだった馬が2馬身半差の完勝です。勝つ時はすべてがうまくいくものですが、明暗が分かれたシーンでした。 団野騎手の父は、私の厩舎でずっと働いてくれた団野勝調教助手です。その昔、息子さんが栗東の乗馬苑で、のちの同期となる岩田望来騎手らと腕を磨いていたこともよく知っています。私も、いつもより気持ちが入ったゴール前でした。 2着エルトンバローズには少し驚きました。大外枠は決して有利ではなかったはずです。西村淳騎手が位置取りより馬のリズムを重視し、いつもより後ろで運んだことが最後の脚につながりました。3着ウインマーベルは1ハロン長いとみられていましたが、1400メートルで速い持ち時計がありました。松山騎手が好位から早めに動いて、スピードでマイルをもたせた、そんな印象の好騎乗でした。 4着ブレイディは前半が少し忙しい感じもありました。外枠なら違ったと思いますし、やはり距離はもう少しあった方がいいと思います。(JRA元調教師)