【スクープ】命を救う人工呼吸器でトラブル100件以上か!窒息状態で救急搬送されたケースも…フィリップス・ジャパンの複数の元社員が証言(前編)
改修器なのに次々とトラブルが発生
東京都への報告によると、2021年の大規模リコールで自主回収を発表したフィリップス・ジャパンが、問題の人工呼吸器の回収に実際に着手したのは2022年4月に入ってからだった。ようやく新しい部品が米国から入荷し、防音材を問題のポリウレタン製からシリコーン製に付け替えて、「改修器」として出荷する作業が始まった。 ところが、しばらくすると病院や患者から「器具は作動しているのに空気圧力が上がらない」「なぜかアラームが鳴る」「患者が苦しがっている」といった苦情が舞い込み始めたという。 匿名を条件に取材に応じた複数のフィリップス・ジャパン元社員によると、当初は「機械的なトラブルだろう」との判断で個別に対処していたという。だがトラブルの件数が膨れ上がり、日本から報告を受けた米フィリップスで本格調査した結果、改修器に取り付けたシリコーン製の防音材が接着が悪くて基板から剥がれてしまう「フォーム剥がれ」が起き、空気の流れを塞ぐ問題が起きていたことがわかった。
筆者が入手した問題箇所の画像をみると、外気の取り入れ口から空気を吹き出すブロワにいたる空気回路に、防音用の白いシリコーン材が渦巻き状に敷き込まれており(写真上)、その中心部の円形部分が浮き上がっているように見える(写真下)。 この円形部分が、患者側に空気を送り出すブロワの吸い込み口と向き合う部分だ。防音材はここでプラスチック製の基板から剥がれ、ブロワ側に吸い寄せられて空気の流れを塞ぐ形になっていたのではないか、というのが元社員の見立てだ。 この事態を受け、親会社のロイヤル・フィリップス(オランダ)は2022年11月、問題に関する第一報を公表し、「米フィリップスが世界の関係当局にも報告した」と説明。12月には米フィリップスも「窒息や低換気状態、低酸素血症といった、生命をも脅かす呼吸トラブルに患者が直面する可能性がある」として、米国内で流通していた改修器約1万4000台を再びリコールとし、自主回収を始めた。