歯ぎしりを甘く見てはいけない理由|歯ぎしりが及ぼす影響と、歯ぎしりを防ぐ方法|医師が解説
歯ぎしりを軽く見て放置してしまうと、日常生活に支障をきたすかもしれません。医師が解説します。 〈写真〉歯ぎしりを甘く見てはいけない理由|歯ぎしりが及ぼす影響と、歯ぎしりを防ぐ方法|医師が解説 ■歯ぎしりを甘く見てはいけない理由 歯ぎしりで歯が少しずつ削られていくと、歯の表面のエナメル質が薄くなっていきます。 エナメル質の厚みには個人差がありますが、およそ2~3mmほどであるのが一般的です。長年にわたって歯の表面のエナメル質が削られていくことでエナメル質の下の象牙質に刺激が伝わりやすくなり、知覚過敏を引き起こします。 歯ぎしりを軽く見て放置すると、重度の知覚過敏にまで進行し、歯磨きのときにもしみるようになって日常生活に支障をきたすので、歯ぎしりを甘く見てはいけません。 また、ギリギリと音をたてながら、歯ぎしりを継続してしまうせいで、夜間の睡眠の質が悪くなり、「夜中に何度も目が覚めてしまう」という人は少なくありません。 適切な睡眠が脅かされると免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなったり、持病が悪化したり、さまざまな健康被害につながりますので、歯ぎしりを甘く見ないように注意しましょう。 ■歯ぎしりが及ぼす影響とは 歯ぎしりは、歯周病の悪化に拍車をかけます。 歯周病とは、歯周組織を破壊して歯をグラグラさせる、あるいは細菌感染によって歯茎の部分が赤く腫れあがり、ひどい場合には歯が抜け落ちてしまう病気です。 歯周病は誰にでも発症し得る病気ではありますが、歯周病を悪化させて進行させるリスク因子としては、不規則な食生活や歯ぎしりをはじめとして、喫煙やストレス、そして糖尿病などの生活習慣病も挙げられます。 歯周病そのものは初期には強い痛みを自覚することがほとんど無いので、ついつい知らぬ間に本人が気付かないうちに病気が進行するリスクがあり、特に近年の研究によると歯周病が歯だけでなく、動脈硬化や心臓疾患など全身病を来たすことが判明されつつあります。 歯ぎしりによって強い力で揺さぶられることで、歯周組織が破壊されるスピードを速めてしまうのです。 ■歯ぎしりを防ぐ方法 現在、歯ぎしりに対して、もっとも一般的に行われている治療法は、ナイトガードを用いた方法です。 ナイトガードとは、睡眠時に用いるマウスピースで、装着して眠ることで上下の歯が直接当たらないようにすることができますし、もし歯ぎしりをしてしまったとしても歯の摩耗や欠損を防げます。 ナイトガードの形状を工夫することで、歯ぎしりの回数を減らすこともできる場合がありますし、ナイトガードを装着すれば、歯ぎしりの不快な音もしなくなるので、一緒に寝ている家族にとっても良好な治療法です。 また、自分で歯ぎしりの症状を改善する第一歩は、質の良い睡眠がとれる環境づくりであり、枕は過剰に高くせず、寝返りが打ちやすい姿勢で眠るようにしましょう。 さらに、歯ぎしりの多くの原因がストレスによるものなので、ストレス解消は歯ぎしりを治すのに非常に有効な方法といえます。 今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟