愛する娘は“妻の不倫でできた子ども”だった。苦しみ抜いて離婚を決めた夫が、最後に“まさかの行動”へ|ドラマ『わたしの宝物』
「宏樹という人間」田中圭の演技に惹きつけられた
最終回、冬月は栞の実父でありながら「部外者」だった。夫婦再構築の踏み台になってしまったのがある意味で気の毒なのだが、その結果、決別したはずの莉紗(さとうほなみ)と関係が修復できた。宏樹に以前、好きだと告白した真琴も、いつしか店で働いている男性に愛されていた。誰もがハッピーエンドで閉幕したのだ。 喫茶店のマスターとして登場した浅岡(北村一輝)が、それぞれの登場人物の心情を説明したり視聴者の代弁をしたりと、なかなかの狂言回しではあったのだが、せっかく怪しい雰囲気をもっていたのに、物語との関わりが薄くて残念だという声も上がっていた。 結局、終始、図抜けた演技を見せ続けた田中圭の圧勝だったのかもしれない。宏樹の冷たさ、葛藤、怒り、自分の感情を出せないつらさ、そして栞への愛情、さらには妻の美羽への赦し。台詞回し、声のトーン、表情、間合い、体の使い方に至るまで、すべてが「宏樹という人間」だった。すべてに無駄がないのに余裕はある。そんな演技に惹きつけられた。
もともと父と子の縁はあやふやなものなのかもしれない
托卵は、現実にも少なくないと言われている。産んだ母親でさえ、父親が特定できない場合もある。子が大きくなったときに知ったらショックは大きいかもしれない。ドラマの中でも栞にいつか本当のことを話さなければいけないかもしれないと、美羽と宏樹が話し合うシーンがあった。戸籍上、実子になっているのだからわざわざ話す必要があるかどうかはわからないが、子には出生について知る権利があるのは確かだ。 宏樹は「血のつながった父子」にこだわったが、冬月は「自分は栞ちゃんが生まれてきたことさえ知らなかった」「半年間、一生懸命育てたのはあなただ」と宏樹こそ父親なのだと告げる。そういうことで父かどうかをはからなければならないほど、もともと父と子の縁はあやふやなものなのかもしれない。 最後に宏樹が「美羽、愛してるよ」と言う。美羽も「私も。愛してる」と返す。そしてふたりは栞にも「愛してる」と言う。愛が不変であるならいいのだがと感じてしまった視聴者の私は性格が悪い。 <文/亀山早苗> 【亀山早苗】 フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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