「定期借地権付きマンション」は費用が抑えられる? マンション価格高騰の中、総戸数522戸の大規模定借マンションが登場。
定期借地権付きマンション(定借マンション)とは?
「定期借地権」のマンション(定借マンションと呼ばれることもある)について、少し説明をしておこう。 借地権には、普通借地権と定期借地権がある。いずれも、一定期間の賃貸借契約を結び、その間は土地の所有者(地主)に地代を払う。ただし、普通借地権は借り手を保護する観点から、地主側に正当な事由がない限り、契約が自動更新される。これに対して、定期借地権は、契約期間が満了したら、原則として土地を更地にして地主に返す。ここが大きな違いだ。 普通借地権の場合、貸主が一度土地を貸すと契約の解除が難しいが、定期借地権であれば、貸した土地が必ず返還され、返還時に借地に建った建物を買い取る必要もないことから、好条件の土地が借地として提供されやすいと言われている。最近では、寺社が伝統建築物の大改修の費用を捻出するために、土地の一部を定期借地権で貸すといった事例が多く見られる。 とはいえ、分譲マンションでは所有権が主流だ。日本住宅総合センターの「定期借地権事例調査(2023年度)」によると、2023年度の定借マンションの事例数は28件、959戸しかない。平均すると、1件当たり約34戸の販売戸数となる(注)。 注:調査はインターネット上に掲載された公開情報を中心に事例収集しているが、小規模なものなどすべての事例を網羅しているわけではない。 1件当たりの戸数は2016年度に約85戸だったが、翌年度以降は20~50戸の間で推移するなど、小規模傾向にある。したがって、552戸という大規模な定借マンションは、極めて珍しいことが分かる。
定借マンションのメリット・デメリット
定期借地権の契約期間は50年以上と定められている。『リビオシティ文京小石川』の場合はそれより長い約70年。2097年7月31日までに更地にして返還することになる。約70年という期間を考えると、30代などの若い世代に向いているといえるだろう。実際にこのマンションでは、30歳代の2~3人世帯を中心に、事前エントリー数は8000件を超えたという。 さて、定借マンションは、最終的に手元に残らないことがデメリットとなる。また、所有権では生じないコストがかかることも注意点だ。イニシャルコストでは、土地を借りる権利金や保証金(退去時に返還される)がかかり、ランニングコストでは、地代や解体準備積立金がかかるといった具合だ。 ※『リビオシティ文京小石川』の場合は保証金不要 一方で、地主が手放したくない一等地の土地に立っていたり、土地の所有権がない分だけ価格を抑えることができたり、といったメリットもある。ただし近年は、契約期間が長くなっているので、必ずしも所有権に比べて大きくダウンするとは限らない場合もある。また、毎年納税する固定資産税・都市計画税については、土地は借地なので建物分についてのみ納めればよい。 なお、定借マンションは売ったり貸したりすることも可能だ。売る場合は、借地権の残存期間が短くなるにつれて資産価値が落ちることもあり、マンションによっては想定より高く売れない可能性もある点に留意したい。 このように、定借マンションにはメリットとデメリットがそれぞれあるが、住まい選びの選択肢は多いほうがよい。定期借地権に関する細かい条件を確認したうえで、自分のライフスタイルに合うかどうかを考えて、賢く選択してほしい。 ●関連サイト 「総戸数522 戸×敷地面積12,000 m2超・文京区最大となる大規模開発 「環境自然配慮型」の分譲マンション『リビオシティ文京小石川』 7月6日(土)よりゲストサロンオープン・事前案内会を開始」日鉄興和不動産ほか 「定期借地権事例調査(2023年度)」日本住宅総合センター
山本 久美子