<北朝鮮内部>ロシアへの労働者派遣を拡大 異例にも審査基準を緩和 派兵を機に増加か
◆派兵を機に労働者選抜も活性化か
咸鏡北道(ハムギョンプクド)の茂山(ムサン)郡の取材パートナーは、昨年12月に次のように伝えてきた。 「昨年春から、茂山鉱山で中国への派遣人員を募集して選抜も終わったのに、中国が受け入れを曖昧に延期したり、制裁違反になるからと、9月に派遣された人が戻されたりした。それでロシアに労働者を送ることになり、身元や職場での組織生活に問題がないか再確認を急いでしている。ほとんどが建設労働に就くそうだ」 また 会寧(フェリョン)市の取材協力者も、当局がロシア行きを大募集していると報告してきた。 「会寧では、ロシアに兵士を送った後の11月15日から募集が活発になった。建設労働と工場労働だ。会寧だけで200人規模で選抜した。勤務期間は1年と2年に分かれていると聞いた」 中国と国境を接する両江道(リャンガンド)でも、不調の中国に代わってロシアに多くの人が向かっている。 「恵山(ヘサン)市からも大勢ロシアに行った。12月だけで37人が行ったそうだ。特別な技術がない人でも選ばれている。復興建設に動員されるという話もあれば、一般の工場で働くこともあるということだ。平壌と羅先(ラソン)を経由してロシアに向かうそうだ。政治的に問題がなければ、職場の推薦と保証人さえあれば概ね派遣許可を出している」
◆当局の搾取ひどいと取り止める人も
一方で、一度決まったロシア行きを取りやめる人が最近増えている模様だ。待遇への不満が理由だ。コロナ以前はロシアで5~10年の長期の出稼ぎが可能だったが、今回は1年か2年と期限が短いという。「3~6カ月の短期派遣の募集もしている。職場の推薦が出たのに行くのをやめた人もいる」と、茂山郡の協力者は言う。 中国やロシアから帰国した労働者の口から、劣悪な労働条件と当局の搾取がひどいとの情報が漏れ出て拡散している。 「近隣に、腰を痛めて中国から戻ってきた女性がいるが、『まるで機械か家畜のように働かされた。1年で5万元(約107万円)は稼げると言われていたのに、ちゃんとお金もらえなかった』と不満を言って、安全局(警察)に呼び出され、青年同盟で自己批判書を書かされる騒ぎになった。もう、派遣で外国に出てもしんどいことは皆知っている」(両江道の協力者) ※青年同盟=社会主義愛国青年同盟 高級中学の生徒、大学生から概ね30歳までの勤労青年までを組織する労働党傘下の大衆組織。 2024年1月には、吉林省の工場に派遣されていた北朝鮮労働者が、賃金が支払われないことに怒って職場を占拠し管理責任者を暴行して死なせる事件があったと日韓のメディアで報じられた。 なお、ロシアに派遣された労働者が、どの地域でどのような仕事に就いているのか、北朝鮮国内の協力者たちは確認できなかった。 ※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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