【海外トピックス】テスラの販売が目に見えて減速。果たしてこれは一時的なことなのか?
自動車のアップルになれるか
モデルYだけで、トヨタカローラ並みの年間120万台以上を世界で販売し、価格も米国の平均販売価格と同等の4万ドル台半ばになったテスラは、「もはやラグジュアリーブランドではなく、今後はトヨタやフォードと比較する」という記事を米オートモティブニュースが先月掲載しました。それに対して業界の識者からは、「性能、イノベーション、デザインやイメージにおいて未だにラグジュアリーの資格を持っている。しかし敢えていえば、従来のカテゴリー分けが通用しないブランド『X』だ」という反論がされたりしています。 これも興味深い議論ではありますが、少なくともテスラがスマホにおけるアップルのように、世界一の量を販売しながら価格も最高というポジションを維持するかというと、製品が遙かに多様な自動車ではそれは難しいでしょう。テスラが次に破壊的(disruptive)な革命を起こすとすれば、それはモデル2になるのか。もしラグジュアリーと同等の最高レベルの性能(速さ、航続距離、充電時間、ソフトウェアなど)を3万ドル以下のコンパクトカーで実現すれば、それはテスラの「X」たる神話を再興させるに十分でしょう。消費者にとっては願ってもない話ですが、実現すれば資本主義のビジネス原理そのものを破壊してしまうかもしれません。(了) ●著者プロフィール 丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。