【海外トピックス】テスラの販売が目に見えて減速。果たしてこれは一時的なことなのか?
販売好転の材料は乏しい
しかしながら、今年から来年にかけてテスラの販売が好転する材料は容易に見当たりません。近く部分改良されるというモデルYも、変更は外観含めて小規模にとどまるでしょうし、開発中の次期ロードスターも台数が見込めるモデルではありません。 NEVの「血の海(Blood Bath)」の様相を呈している中国市場では、中国メーカーの販売比率が今年中にも60%に到達しそうです。フォルクスワーゲンやGMは過去5年間で中国の販売が100万台ずつ減少しており、ロイター通信は先週、上海汽車がVWとGM両社との合弁会社で大規模な人員削減を計画していると報じました。BYDの王伝福会長は、3~5年以内に外国ブランドのシェアは10%まで減少すると予告したようで、日本メーカーも戦線縮小を計っている状況です。EVのリーダーであるテスラも、BYDをはじめとする中国メーカーの攻勢の影響を免れるとは思えません。 一方、EVを躊躇する消費者がハイブリッドやPHEVを選択している米国では、EV専業メーカーとして実績があるテスラを利するということも考えられます。EPAのCO2削減目標も緩和されてGM、フォードなどの既存メーカーが無理をしてEVをプッシュしなければ、それがテスラにとって有利に働き、EV市場のシェアはしばらく現状を維持できるというシナリオです。
普通の自動車会社になりつつある
EVで圧倒的な先駆者利益を享受してきたテスラですが、市場がアーリーアダプターからアーリーマジョリティに移行するにつれ、その優位は薄れつつあります。アップルはiPhoneを次々にスペックアップして価格も上げ、買い替え需要を喚起してトップの座を15年にわたって維持してきましたが、最近はそれも翳りが見えます。OTA(over the air)によるソフトウェア更新などで先行したテスラも、インフォテイメントや自動運転(支援)などの性能は、テスラを模倣し急速に追いついてきた中国メーカーに対して優位を主張できなくなっています。 一発逆転は、マスクCEOが何度も約束しながら未だ実現していないFSD(フルセルフドライビング)でしょうが、ウェイモなど多くのライバルが開発競争に凌ぎをけずる中、レベル5の完全自動運転にはあと10年くらいかかると見られており、それはついに空手形に終わる可能性もあります。今後もテスラが目覚ましい成長を望むなら、蓄電池や人型ロボットのオプティマス事業やAI(!)などEV以外で収益を確保する必要がありそうです。 テスラの今年の販売台数は220万台程度との予想が主流でしたが、Q1の実績を見る限り、昨年を上回ることさえ容易ではなさそうです。年初から30%以上下落した同社の株価は、ツイッター買収時のゴタゴタで2022年末に付けた110ドルの底値に向けて今後さらに下落もあり得そうです。時価総額(5500億ドル)では、この半年で40%上昇しているトヨタ(4000億ドル)との差が縮まり、ひょっとしたら逆転さえあるかもしれません。