【Photos】北の大地が織りなす湖川の美
道東は湿原の宝庫
北海道以外ではあまり見られない湖に、海跡湖(ラグーン)がある。海岸に砂嘴(さし=海中に砂が細長く堆積してできた堤)や砂州(砂嘴が入り江まで達したもの)ができ、そこに水がたまってできた湖だ。それが海面の低下や、河川から流入する土砂によって埋め立てられると湿原になる。海跡湖の周辺でよく見られる湿原には、夏季に豊かな植生に彩られ、原生花園(砂丘に形成された天然の花畑)となる所も多い。道東では風蓮湖(ふうれんこ、根室市・別海町)、塘路湖(とうろこ、標茶町)、野付岬やサロマ湖の周辺にある湿地で美しい花が咲き、私たちの目を楽しませてくれる。 268.6平方キロと日本の湿地面積の6割を占める釧路湿原も地史をたどればラグーン起源のものだ。冬にはガンやカモなど水鳥の渡りの中継地となっている。
生命を育む河川
欧米の人たちが日本の河川を見ると、これは小さな滝の連続で自分たちが考える川とは異なるという印象を持つとよく言われる。山と海とがあまりにも近いので急流が多く、大河といった雰囲気の川が少ないからであろう。彼らが川と呼ぶものは、日本では北海道にしかないと言えるかもしれない。石狩川、天塩川、十勝川など、それぞれ大河の面影をたたえる。北海道の川は日本アルプスより標高が1000メートルほど低い山岳地域から流れ下ることに大きな特徴がある。 2つ目の特徴は天塩川河口で見られるように、4月から5月の融雪期と、7月から9月の台風や降雨前線の活動期の2回の増水期を持つことだ。 そして3つ目の特徴は、海から川に遡上(そじょう)して上流で産卵する魚、サケやマスの類が多いことである。シロサケ、カラフトマス、サクラマスなど川で生まれた小さな稚魚がオホーツク海や北太平洋を回遊して同じ川に帰ってくる。 日本の淡水環境は春夏秋冬、その時々で表情を変える。北の大地・北海道の湖沼や湿原、河川の特徴としては、冬になると日中でも気温が氷点下以下になることで水が雪や氷となって、光景が一変することであろう。 写真と文=水越 武