アメリカから見た“終戦の日” 変わりゆく第二次世界大戦のイメージ
戦後70年を迎えた今年の8月15日。日本ではメディアで大々的な戦争特集が組まれ、歴史の「節目」に太平洋戦争を振り返りました。一方で、 日本がポツダム宣言による降伏文書に署名した1945年9月2日は、アメリカでは第二次世界大戦が終わった“終戦の日”であります。今回は、アメリカからみた第二次大戦とはどのような意味を持ち続けるのか、考えてみます。(上智大学教授・前嶋和弘) 【写真】中国戦勝70年式典で話題 「抗日戦争」とは誰が戦ったの?
かつては祝日だった「VJデー」
アメリカにとって、第二次大戦の戦勝記念日は2つあります。1つは、ナチス・ドイツが降伏した日(1945年5月8日)のヨーロッパ戦勝記念日であるVE(ビクトリー・オーバー・ヨーロッパ)デー。もう1つは日本が降伏した対日戦勝記念日「VJ(ビクトリー・オーバー・ジャパンデー」です。中国では時差がある分、9月3日を対日戦勝記念日としているようです。 アメリカの「VJデー」の方は「勝利の日(ビクトリー・デー)」と名前を変え、1975年までは連邦政府の祝日でした。ただ、その祝日なのですが、特定の日付ではなく「8月の第3月曜日」でした。「勝利の日」は、いまは連邦政府の祝日ではないのですが、ロードアイランド州だけは「8月の第2月曜日」を「勝利の日」の祝日として残しています。
薄れつつある第二次大戦の記憶
日本の場合、毎年の夏は新聞からテレビのドラマまで戦争特集が繰り返されます。ちょうど先祖を弔うお盆もあり、8月には「戦争行為そのものが悪」という記憶を毎年、再確認している気がします。 日本と比較して、アメリカの夏の戦争特集は多いとはいえません。アメリカのもっとも代表的なニュース源である3大ネットワークの夕方のニュースでは、「VEデー」の5月8日、「VJデー」の9月2日のいずれも、何らかの形で取り上げますが、扱いは必ずしも大きくはなく、特集などがなければ数秒で終わるケースもあります。 誤解を恐れずに言えば、「VEデー」にしろ、「VJデー」にしろ、少しずつ記憶が薄れつつある、歴史的な記念日という扱いです。多くの米兵の犠牲の中で戦局を変えたノルマンディー上陸作戦の「Dデー」(1944年6月6日)はより個人的な壮絶な体験を交えた特集になりえるため、「Dデー」の方が「VJデー」目立っている印象もあります。