『損失の悲しみ』は『利益の喜び』の2倍以上? 投資家が株価暴落時こそ知っておくべき心理的落とし穴
株価暴落時、投資している資産に損失が出ていれば、冷静な判断が難しくなることがあります。相場が不安定な時こそ、過去のデータや論理的な思考に基づいて落ち着いた行動ができれば理想的ですが、なかなかそうはいかないですよね。 【画像】死ぬまで持ちたい銘柄とその買い方 「行動経済学」という考え方を知れば、陥りがちな投資心理を知ることができ、株価暴落時であっても一歩引いた冷静な判断ができるようになるかもしれません。今回は「行動経済学」の視点から、投資と上手に付き合う方法を解説します。
投資において「感情」を抜きに判断するのは難しい
そもそも「経済学」は、人が経済活動の中でどのように意思決定し、行動するのかを解明する学問です。従来の経済学では、個人や企業は感情や偏見に左右されず、事実や論理的思考に基づいて冷静に判断や行動し、利益を最大化すると考えられてきました。しかし実際の経済活動では必ずしもそうとはいえません。 「行動経済学」は、人が「非合理的な行動をする」ことを前提とする学問です。例えば、お金を増やしたいと思ってもなかなか行動できない方もいらっしゃいます。それは、「現状維持バイアス」がはたらいているからです。「現状維持バイアス」とは人が無意識に、現状の状態を維持することを好むため新しい選択や行動をとること抵抗感を持つという行動経済学の理論です。 投資を例に出していえば「あの時、(株や投資信託を)売らなければよかった。」、「あの時買っておけばよかった」と、後悔した経験はないでしょうか。このような投資における感情的な行動を説明できるのが、「行動経済学」です。
投資の世界に存在する行動経済学の理論を知る
では、投資の世界でよくみられる行動経済学の理論を3つ解説します。
①損失回避バイアス
人間は損失を恐れるあまり、利益を得る機会を逃すことがあります。行動経済学の先駆者であるダニエル・カールマンらによって提唱され、その研究によれば、『損失の悲しみ』は『利益の喜び』の2倍以上とされています。 資産運用における損失回避バイアスの具体例としては、 A.投資した資産に利益が出ているとき、早めに利益確定をしてしまう。 B.損をしているときには損失を確定させたくないため売却を躊躇してしまう。 このような行動が挙げられます。 株価の下落局面で、Bの心理が働いて損をしたくないからとなかなか売却できずにいる間に、売却を促すネガティブなニュースが流れ、多くの投資家が売り注文を出し、より相場の下落を加速させる現象が起きるのも損失回避バイアスで説明できるのではないでしょうか。