「上っ面だけの人」と「信念ある人」 その圧倒的な差は自己紹介に表れる
話が抽象的に流れるか、具体的に深まるか
それに、上辺だけの自己紹介は大体、聞けば分かるものです。あるパネルディスカッションに招かれたとき、「あなたの夢は何ですか?」と他のパネラーに尋ねました。1人は地元企業の経営者で、次のようなやりとりでした。 Q.あなたの夢はなんですか? A.地元に貢献することです。 Q.なぜ貢献したいのですか? A.それは僕の情熱だからですね。 Q.なぜそこに情熱が湧き上がってくるのですか? A.それは人生だからですね。 このやり取りを読んで、みなさんはどう感じるでしょうか。質問されるたび、話が抽象的になっていくことに気づくと思います。上辺だけで辻褄を合わせようとすると、話が抽象化に向かいます。質問に対してうまく返すことが目的になっているので、間違いではないところをグルグルと回るだけで、話が一向に深まらないのです。 もう1人、地元の大学生にも同じ質問しました。 Q.あなたの夢はなんですか? A.地元のPRをやりたいです。 Q.なぜそう思うのですか? A.過去に◯◯という体験があって、地元のことをもっと知ってもらいたいと思ったからです。 Q.地元のどんなところを知ってもらいたいのですか? A.私は◯◯というところが大好きで、こういうところを知ってほしいです。 こちらはどうでしょうか。聞けば聞くほど具体的な話や原体験が出てきます。自分にとことん向き合ってきた人は、こうなります。本気で考えている人と、ハッタリで話している人の違いとして、質問に対してより抽象的な言葉で返ってくるか、具体的な言葉で返ってくるか、で見極めることができます。 話が抽象的に流れるか、具体的に深まるかで、その人の自己紹介が上辺だけのものなのか、本質につながったものなのかが分かります。自己紹介を否定的にとらえる人に伝えたいのは、自分の本質から外れた、上辺をよく見せるためだけの自己紹介なら、しないほうがいいでしょうということです。 かといって、本質を究めた人は、自己紹介をしなくていいかというと、そうではありません。その人の本質をみんなが理解してくれるわけではないからです。自分の本質を言語化し、分かりやすく伝える自己紹介なくして、チャンスを引き寄せることはできません。
大澤正彦(日本大学文理学部准教授)