「先生に怒られる」と渋々着けたヘルメット、少年の命つなぐ…自転車での着用は高校生に浸透せず
福岡県教育委員会は25日、来年4月から、自転車で通学する県立学校生徒のヘルメット着用を義務化すると発表した。 【図】一目でわかる…自転車ヘルメットを着用しない理由、最も多いのは?
発表では、各校の校則などで自転車通学の要件として盛り込む。県内では全ての県立高校で自転車通学が可能で、今年度は6割にあたる約3万9000人が自転車で通学している。
自転車のヘルメット着用は昨年4月施行の改正道路交通法で努力義務になったが、特に高校生に浸透していない。県警による今年7月の着用率調査では、県内平均の12・8%に対し、高校生は年代別で最低の8・1%。今年7~9月に県内で発生した高校生の自転車乗車中の事故の約5割(58件)が登下校中だったという。
自転車通学時の事故で、実際にヘルメットによって一命を取り留めた福岡市内の少年が取材に応じ、着用の重要性について語った。(岡林嵩介)
「着けていなければ死んでいたかもしれない」。少年(16)は当時をこう振り返る。中学3年だった昨年9月、福岡市内を自転車で登校中に交差点で車と衝突。頭を強く打ち、物忘れや体の動きの鈍化など高次脳機能障害の後遺症が残った。それでも今年6月に退院し、脳の機能を鍛えるリハビリに通いながら、1年越しの高校受験に向け、勉学に励んでいる。
通っていた中学は自転車通学時の着用を義務づけており、少年は「先生に怒られるから」と渋々着けていたことが命をつないだと痛感する。少年の母親(41)は毎朝ヘルメットのあごひもを締めたか確認しており、「かぶらせていて本当に良かった」と語る。少年は今、「着用が広がってほしい」と強く願う。