年間1000人が警官に殺される米国 「銃を持つ権利」と市民と警察の間の溝
警察の「過剰な力の行使」が非難の的に
今年だけで123人の黒人が警察官によって射殺されていることは前述したが、アメリカでは勤務中の警察官によって射殺される市民がどのくらいいて、逆に警察官の殉職はどれくらいの頻度で発生しているのだろうか? 2014年夏には、警察官が丸腰の黒人青年を射殺したことが発端となり、ミズーリー州ファーガソンで連日にわたって抗議の暴動が発生。その後、ファーガソンでは地元警察のトップが交代し、警察は地元の黒人コミュニティへの信頼回復に努めているが、アメリカ全体では警察官による発砲の状況は2年前からそれほど大きく変化していないのが実情だ。 7月初めにルイジアナ州とミネソタ州で発生した警察官による黒人の射殺事件直後に、ワシントン・ポストは2016年7月7日までに アメリカ国内で警察官に射殺された市民が512人に達したと報じている。ニュースメディアが流すビデオ映像や人種暴動のイメージが強いため、白人警官が黒人に向けて発砲するケースが大半を占めているように思われるかもしれないが、実際には警察官による発砲では白人が黒人の倍近い数字で死亡している。 512人のうち、白人が238人で、黒人は123人だ。他人種についても触れておくと、ヒスパニック系が80人で、その他(アジア系やアラブ系、ネィティブアメリカンなど)のカテゴリーには23人。人種が特定できないケースも48存在した。射殺された人は男性が圧倒的に多く、実に487人となっている。州別では、カリフォルニア州が最も多く(66人)、そのあとにテキサス州(45人)とフロリダ州(33人)が続く。 死者数では黒人よりも白人の方が多いのだが、「射殺される確率」で考えた場合、黒人の方が圧倒的に多いことが分かる。警察官に射殺された白人は全体の約46パーセントであったが、アメリカの人口における白人の割合は約62パーセントだ。警察官に射殺された黒人の割合は約24パーセントだが、アメリカの総人口に占める黒人の割合は13パーセントにしかすぎない。白人が黒人よりも約1億6000万人多いアメリカで、黒人が警察官に射殺される確率は白人の約2.5倍となっている。