“トランプ関税”や協業、全固体電池…不安と期待が交錯する“100年に一度の変革期” 日本の自動車業界のベクトルに迫る【2025年ニュース展望】
どうなる日産 アメリカの販売戦略がカギ
また、アメリカでの日系自動車メーカーの販売を考える中で避けては通れないのが、日産だ。 アメリカでハイブリッド車の需要が高まる中、日産はアメリカ市場でガソリン車とEVのラインアップしか持たないことから販売に苦戦。販売促進のための奨励金が増加したことなどから、2024年度の中間決算では純利益が前年度から93.5%減少し192億円となった。 自動車アナリストは、トランプ氏がアメリカのパリ協定脱退を実行し、EV補助金を撤廃した場合、EVを持つ日産には「泣きっ面に蜂」の状況になると話し、「柔軟な選択が求められるだろう」と指摘した。
EVのゲームチェンジャー「全固体電池」は前進 EVはどうなる?
一方、未来に向けた取り組みも着実に進んでいる。 航続距離や充電インフラなどの懸念から普及に伸び悩むEVだが、この状況を変えると言われているのが「全固体電池」だ。全固体電池は、充電時間が短く航続距離をのばすことができるなどの特徴から、次世代のEV向け電池として期待され、EVの存在を変えるとも言われている。 2023年にはトヨタが、出光興産と量産実現に向けて協業するなどし、2027年から2028年に市場導入を目指すと明らかにしていた。 さらにホンダは2025年1月から栃木県さくら市の拠点で、EV向けの全固体電池の実証生産ラインを稼働させる予定。従来のリチウムイオン電池と比べて航続距離が2倍になるほか、コストも25%低減できるとしていて、2020年代後半の量産開始と投入するモデルへの搭載を目指すとしている。 日産も3月に試作ラインを稼働させる予定で、2028年度に全固体電池を搭載した新型EVを市場に投入する予定としていて、EVの普及拡大に向けて一歩前進する年になると言えるだろう。
日産とホンダが経営統合に向けて協議を開始
そして2025年を目前にした12月23日、ホンダと日産が経営統合に向けた協議に入ることが発表された。 両社は2024年3月、協業に向けた検討を始め、8月には、EVの部品の共通化などで合意をしていて、今後は経営統合に向けた検討を重ねる。2025年1月末には日産が筆頭株主の三菱自動車が合流の是非を決定し、6月に最終契約を目指すことにしている。両社は共同の持ち株会社を設立し、これまでのブランドは残した上で両社が傘下に入り、2026年8月をめどに東京証券取引所のプライム市場への上場を目指す方向性を示した。 また、経営統合では両社のガソリン車からハイブリッド車、EVなどのモデルの相互補完や、生産拠点などの最適化、購買機能の統合などでシナジー効果が期待できるとし、営業利益3兆円を超える企業を目指すとした。 しかし、経営統合にはハードルも多い。仮に経営統合が成立した場合、両社の主要なモデルや展開する市場に重なりがあるとして、本当にシナジー効果を発揮できるのか、と疑問視する声も聞かれる。 さらに日産の主要株主であるフランスの自動車大手ルノーは「あらゆる選択肢を検討する」との声明を発表したほか、台湾メディアは、台湾の大手電子機器メーカー鴻海精密工業が、日産の株式取得に向けてルノーと交渉していると報じるなど、様々な角度からの検討が必要になる。 経営統合の検討まで至った背景には、日産の内田社長がホンダについて「将来の危機感が共有できる相手」と述べたように、自動車業界の変革が進んでいることがある。 アメリカのテスラや中国の新興メーカーが、EVやソフトウェアの分野で勢力を拡大している。ホンダの三部社長も「進化するスピードがものすごく速い」「それは我々の既存自動車会社のかつて、あまりやってこなかった以上にものすごいスピードで進化している」と認識を示した上で、「(経営統合で)それが勝てるかというと、そんなに甘いものではない」と危機感を示した。 それぞれの課題を抱える中で、両社のシナジー効果を最大限発揮する方法を模索しながら、モビリティの変革をリードする存在になることができるのか。期待と不安が入り交じる一年になるだろう。