最初は抵抗あったけど、もう全部やっちゃおう、って――サブスク全解禁、矢沢永吉50年目の先へ
既存の権威に歯向かい、敵だらけの四面楚歌状態で、なぜ矢沢は生き残れたのか。 「俺の意地なのか。でも、そんなもんじゃダメだろうな。音楽性がなかったら消えてる。根性がどうした、意地がどうしたでね、50年やれないから。やっぱり、口ずさみたくなるメロディーがあったからじゃないですか」 70歳を超えても、矢沢は全国ツアーを続けている。ステージを2時間も縦横無尽に駆け回り、観客を飽きさせないため適宜セットリストも組み替える。ハードな日程をこなすため、普段から日々のトレーニングを欠かさない。そして真夏の今も、自分を追い込んでいる。 「個人リハーサルではエアコン止めて、ストーブ2台焚いて1時間ぐらい歌ってます。ステージの上って照明がガンガン当たるし、暑いですから。これやっとくと、持久力が上がってくる。脱水症状を起こしちゃいけないから、塩分や水分を意識して、汗かいたらTシャツを取り換えながらね。あのね、真夏にストーブ焚くと暑いんだよ」
72歳、まだまだステージで戦う
今夏には50周年ツアー『MY WAY』をスタートさせ、8月27日、28日には新国立競技場史上初の有観客ライブを行う。 「このぐらいの年になったら、あっち痛い、こっち痛いはありますよ。でもね、考えというか、現実とどう向き合いながら、ツアーをやるか。去年、最初の4、5本はね、ステージが終わったら足が痙攣していたのね。それが本数を重ねていくと、症状が出なくなる。大変だけど、そのギリギリ感が面白い」 6月、吉田拓郎の引退が報じられた。かつて、ラジオにゲスト出演するなど親交の深かった盟友の決断をどう感じているのか。 「もっと歌ってよと言いたい。拓郎のあの声、あのメロディーをまだまだ聴きたい。音楽仲間としては、もったいない、とんでもないよと思う。だけど、これは付け加えておきたいね。外の人間にはわからない、ご自身しかわかり得ないことがあるのかもしれない」 これからもずっと、矢沢は日本武道館のステージで「ロックンロール!」と叫び、マイクターンをかます。「ルイジアナ!」の一声とともに、客席でタオルが宙を舞う――。そんな想像は許されないものか。 「いずれ歌いたくても声が出ないとか、あのステップを踏めないとか、そういう時が黙ってても来るでしょう。『(観客に対して)おまえが取るのか、俺が取るのか。いこうぜ!』という戦いができなくなったら、マイクを置きます。でも、矢沢の魂はまだまだ老けませんよ」 ___ 矢沢永吉(やざわ・えいきち) 1949年広島県生まれ。今年デビュー50周年を迎え、今夏には史上初となる新国立競技場での有観客ライブを控える。8月1日からはライブ盤を含む新たにリマスターされたアルバム45枚、計638曲のサブスク配信を解禁。うちApple Musicでは、ドルビーアトモスによる空間オーディオにミキシングされた『I LOVE YOU,OK』『いつか、その日が来る日まで…』『ALL TIME BEST ALBUM』の3作品を独占配信する。