橋本大輝、王者の思考「けがは強化のチャンス」「道は1本じゃない」…史上3人目の偉業へ
[エース出陣]<4>体操男子 橋本大輝 22セントラルスポーツ
夏のパリ五輪が開幕するまで1か月を切った。目前に迫った大舞台で、注目競技の日本のエースたちはどんな戦いを挑もうとしているのか。担当記者が紹介する。
2021年東京五輪で個人総合金メダルに輝いた直後、パリ五輪でも頂点に立つと誓った。体操ニッポンの絶対的なエースは、けがに見舞われた期間も強化のチャンスと位置付ける対応能力を発揮し、一歩も後ずさりすることなく大舞台へ上がる準備を整えている。
実力と過去の成績を評価される形で、国内選考会が始まる前に早々と代表の座を射止めた。今年5月のNHK杯は、開幕直前の会場練習で右手中指を痛め、大事を取って出場を見送った。しかし、練習の強度を徐々に上げて「(五輪本番まで)順調にいけるかなと思っている」。器具に触れる時間が少なければ、最大のポイントになる着地の練習に力を注ぐだけ。「印象のいい着地につながるかなと思って」。踏み切り板からの後方宙返りなどで、バランスの取り方や姿勢の作り方を何度も確認した。
練習が公開された6月21日、本番を想定した全6種目の演技を披露した。「平行棒で痛みが残って、まだ(状態は)60%くらい」と話したが、「それ以外では、痛みは本当に少なく、(6種目を行う)体力にあまり不安を感じなかった」。冬場の厳しい練習で蓄積した疲労の解消も、意識していたに違いない。日本協会の水鳥寿思(ひさし)・男子強化本部長は「このままいけば大丈夫かなと思っています」と信頼を口にした。
現世界王者は、昨年1月に腰の疲労骨折が判明し、その後の過ごし方を通じてトラブルとの付き合い方に手応えを得ていた。
思うような練習ができずに「いろいろストレスを抱えていた」が、患部への負担が比較的小さいあん馬の旋回、つり輪の力技などを徹底的に磨いた。明らかに減点される場面が少なくなった。同年秋の世界選手権では8年ぶりとなる団体優勝に貢献し、当然のように個人総合も連覇を遂げた。