「花鳥風月―水の情景・月の風景」(皇居三の丸尚蔵館)開幕レポート。水と月を技巧で見せる名品群
皇居東御苑内にある皇居三の丸尚蔵館で、雨などの水の景色や、月をあらわした風景などの作品を、皇室伝来の収蔵品のなかから紹介する「花鳥風月―水の情景・月の風景」が開幕した。会期は10月20日まで。 美しい自然をあらわす「花鳥風月」のなかでも、水や月にまつわる景色を表した収蔵品を紹介する本展。展覧会は大きくふたつの章に分けられており、ひとつめの章は「水のかがやき、月のきらめき―工芸品」と題され、江戸時代から大正時代にかけての、漆工や金工などの工芸品を紹介している。 本章では中国のハつの景勝地「瀟湘八景」になぞらえて琵琶湖南岸の景色を選んだ「近江八景」を表した《近江八景蒔絵棚》(18世紀、江戸時代)や、同じく近江の石山寺を題材とした硯箱、川之邊一朝《石山寺蒔絵文台》(1899、明治32年)など、蒔絵の名品が並ぶ。 《金烏玉兎図花瓶》(1915、大正4年)は三重・四日市の萬古焼の花瓶で、月の象徴てまある玉兎と、太陽の象徴である三本足の金烏があしらわれた迫力ある構図が魅力だ。濤川惣助《七宝墨画月夜深林図額》(1899、明治32年)は水墨画のように見えるが、水墨画の技法を七宝で忠実に再現するという技巧を感じられる逸品だ。
文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)