『修道士は沈黙する』アンドー監督、世界経済リードする一握りの人間を疑う
修道士に託された「数式」の映画における存在感
映画の中に「自己の良心の再発見」という言葉が出てくる。しかし、経済界や国の中での立ち位置から離れられず、その境地には辿りつかない。そしてG8のメンバーは、貧困層をさらなる貧困に貶める決定をくだそうとする。だがそれは、ロシュの死によって阻まれた。これはなにを意味しているのか? 『スリー・ビルボード』にも、がんを告知された警察署長が、自らの命を絶つことで、なにかを救おうとし、それによって救われようとすると感じられるエピソードがあった。 「自分が神のように、すべてを動かしてきたと思う人間へのがんの告知は、自分の時間に終わりがあること、全能ではないと告げられたのと同じなのだと思います。でもロシェには自分がしたことへの後悔はないでしょう。むしろ最後までハンドリングし切った。そして、すべてを修道士の手に委ねるわけです」 そこで修道士に託されたのは、皮肉にも“数式”だった。恐ろしいまでの力を持った“数式”がもたらす結論は……。ぜひご覧いただきたいが、あの数式は、本当にその効果を発揮するものなのか? 知りたいと思った。 「数式は本物です。数学者に作ってもらいました。でも、ただの式です。何の意味もない。そういうふうに考えていました。ですが、映画が公開されて数週間経ったとき、イタリアの有名な数学者がこの数式を解き、論評を書きました。この数式は、僕が思う以上に有効なものだったようです」 (取材・文・撮影:関口裕子)
■修道士は沈黙する■ 配給:ミモザフィルムズ、2018年3月17日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 2015 BiBi Film-Barbary Films