美容医療ボトックス注射で「首がグラグラ」、胃や唾液腺に打つ人も…韓国での施術や未熟な医師によるトラブル増加の背景
■高齢者は要注意、「目が閉じにくい」「笑えない」トラブル回避する方法は?
――先ほど、部位によっては美よりも弊害が出る場合があるというお話がありましたが、メジャーになっているシワ取りもトラブルはあるのですか? 「表情筋の働きが止まるので、口元の場合は歪んだり笑えなくなったりします。目のシワの場合は、目が閉じにくくなったり、表情が変わるなど、やはり弊害は生じます。また額の場合、額を上げられなくすることでシワが寄ることを改善するので、当然まぶたが重く、幅が狭くなります。そうなってしまったという相談は非常によく受けます」 ――そのようなトラブルを回避するためにはどうしたらいいのでしょう。 「ボトックスの打ち過ぎが原因なので、打つ量を少量にすることです。追加もできるので、あまり攻め過ぎず『まずは少量から試してみたい』と医師に伝えることをお薦めします。ただ万が一トラブルが起こっても、良くも悪くも必ず効果は3~4ヵ月で切れます。気に入らない結果になっても戻るし、逆にすごくいい仕上がりになっても定期的に打つ必要があるのです。ただし、筋肉を細くする治療については注意が必要です。高齢者になるほど痩せた筋肉を元に戻すのは大変になるので、高齢者は特に肩や足など大きな筋肉への注射に注意していただきたいと思います」 ■韓国でのトラブルも増加、日本でも技術や経験少ない“直美”医師に注意 ――そのほか、美容医療の分野で最近、先生が注意が必要だと感じることはありますか? 「韓国でのトラブルが増えているなと感じています。鼻を高くする施術で人口軟骨のプロテーゼを挿入したつもりが、合成繊維のゴアテックスを入れられていたとか、帰国後腫れてしまって日本の病院で再手術を受けたら、全然違う素材のものが入っていたとか」 ――恐ろしいですね…。 「日本でも最近、『儲かる』『当直がない』などの理由で、研修が終わってからすぐに美容クリニックに勤務する医者が増えていて、“直美”(ちょくび)という言葉も生まれたくらい。“直美”のすべてがそうではありませんが、技術を高めたり経験を積むことをしないまま施術を行った結果、合併症が増える等の問題が一部で発生しています。実際、美容医療の分野では訴訟をはじめ、国民生活センターなどに寄せられる相談が非常に増えています。厚労省もクリニックに対して安全管理の報告を義務付けるなどの取り組みに乗り出しているほどです」 ――そんなに大変なことになっているのですか! 施術を受けたいときは何に注意したらいいのでしょう? 「とにかく、医者選びをしっかりすることです。値段や広告で判断しないで、先生のプロフィールを調べて、経験豊富な先生のところで受けていただいたほうがいいと思います」 【監修】 圓山 尚(えんやまたかし) ナチュラルスキンクリニック院長兼クリニックフォア監修医。金沢医科大学医学部卒業後、日本医科大学附属病院皮膚科に入局し皮膚科・皮膚外科・レーザーを中心とした診療を行う。その後、湘南美容クリニックでの勤務を経て、2019年にクリニックフォア新橋院を開院。現在はクリニックフォア監修医と永福スキンクリニック(現ナチュラルスキンクリニック)の院長を務め、”美のかかりつけ医”として活動している。 (文:河上いつ子)