喪失感を抱きながらも、傷つきはしなかった――大竹しのぶがコロナ禍に思うこと
稽古が始まる前、稽古の途中、劇場に入る前……、たびたびPCR検査を受け、感染症対策を行いながらの稽古が続く。 「幕が開かない可能性も、ないとは言えない。でも、一日一日、稽古が楽しい。明日駄目になるかもしれないと思っても、『今日は楽しい』『今日はできた』と思いながら、生きています。あんまり先のことを考えていないかもしれない。芝居をしている時はとにかく楽しくて、何も考えないでいられる。今、稽古をしているから、本当に幸せだなと思います」 「こないだ、まだ看護師さんになったばかりの女の子がニュースに出ていて。コロナの患者さんと向き合って、初めて人の死に立ち会ってしまったと。その子は今、患者さんのためにも生きていると思った。オーバーかもしれないけど、芝居って、本当にお客様のために、全部を捧げるもの。看護師さんたちのほうがすごいことをやってらっしゃるんですけど、もし楽しみたいとか、希望を持ちたいという人がいて、劇場に来てくださるのであれば、その人に対して全身全霊でやるから、受け止めてほしいと思います」
大竹しのぶ(おおたけ・しのぶ) 1957年生まれ。東京都出身。1975年、映画『青春の門』で本格的にデビュー。映画、舞台、ドラマ、音楽など幅広く活躍。主演舞台『フェードル』は、1月8日から26日までBunkamura シアターコクーン、以降、全国各地で上演予定。