ノーベル化学賞の吉野彰氏が会見(全文3完)柔軟性と剛直性が必要
リチウムイオン電池搭載車は今後どういう使われ方をするか
東洋経済新報社:東洋経済の印南と申します。先生、おめでとうございます。 吉野:ありがとうございます。 東洋経済新報社:私からも2点だけ質問させてください。1点目なんですが、先ほど歴史がお好きというお話がありましたが、じゃあ今度ちょっと未来のことを予想していただきたいんですが、リチウムイオン電池が搭載された自動車は、これから未来、どういうふうな使われ方をされていくというふうにお考えでしょうか。 吉野:これは非常に難しいご質問だと思うんですけど、私自身が考えているのは、単に電気自動車がどうなるかとか、リチウムイオン電池がどうなるかだけで物事を見ちゃいますと、たぶん見えてこないと思います。よく今、AIの技術ですとかIoTの技術とか5Gとかロボットとか、いわゆる次の大きな変革が今始まっているんですよね。たぶんそういうものとドッキングしながら新しい世界をつくっていくんだと思います。 ですから単なる電気自動車じゃなくて、例えば無人自動運転の電気自動車ですとかね。それが、いわゆるシェアリング、自分で車を所有するんじゃなくて、いわゆる共有、シェアリングしながらという、そういう新しい技術の大きな変革の中で車も変わるし、電池もたぶん変わっていくんだと思います。1つの未来の車の、さっき言いましたね。無人の車が、電気自動車が走り回って好きなときに誰でも乗れますよと、それが1つ、サステイナブル、地球環境に非常に優しい1つの姿ではないのかなと思っています。じゃあそれはいつ実現するんですかと聞かれてもちょっとあれですけど、10年ぐらいにはそういうような姿が見えてくるんじゃないのかなと私は思っています。
日本メーカーは今後どうやって存在感を示すべきか
東洋経済新報社:ありがとうございます。すみません、もう1点なんですけれども、リチウムイオン電池、今、研究開発もどんどん進んでいますけれども、日本だけじゃなくてアジア、中国メーカーとかも非常に投資をしてますけれども、そういったお金に、どんどん投資していく中で、日本のメーカーというのはどうやってこれから存在感を示していけばいいんでしょうか。 吉野:これはたぶんリチウム電池に限った話じゃないかと思います。日本の産業自身が、今おっしゃったような問題、課題を抱えているかと思います。とはいえ、日本の産業で意外と健闘しているのが川上部分なんですね。ですから基幹材料とか基幹部品、これは今日現在も非常に世界の中で強いと思います。 例えばスマートフォンは確かにほかの国で作るのかもしれないけども、そこに入っている部品材料は全部日本ですよということだと思うんですね。ですから川上部分につきまして基幹部品、基幹材料含めて、まだまだ日本は非常に強みを持っているなと思います。理想的なのは川上と川下、両方押さえることなんですよ。残念ながら川下というのは、日本はからきし駄目ですよね。もうGAFAの、全部向こうですからね。ですので、やっぱり日本として理想的なのは川上がしっかりしているうちに、間に、GAFAに相当するような企業、あるいはベンチャーが1つか2つぐらい日本で生まれたら強くなると思うんです。 東洋経済新報社:ありがとうございます。 司会:そうしましたら、じゃあこちらのほうに戻して、一番前のピンクのシャツの方。