「103万円の壁」が示す“継ぎはぎ税制”を放置でいいのか?問題は引き上げ幅と財源だけじゃない
■ 元大阪府知事・橋下家の“家訓”は… 大学生のアルバイトを例に取れば、年収103万円が本人の所得税がかかる境目となるだけでなく、扶養する親が「特定扶養控除」(19歳以上23歳未満の扶養親族に対する控除、1人につき63万円)を受けられるかどうかのボーダーラインにもなる。 大学の学費負担に配慮した特定扶養控除は、一般親族を対象とした「扶養控除」(1人につき38万円)よりも高く設定されている。最高税率(45%)が適用される親が大学生の子供の特定扶養控除が受けられなくなったとしたら、所得税だけでおよそ30万円の負担増となってしまう。 大学生の子供を持つ元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が、ニュース番組で「『バイト代は103万円を1円でも超えるべからず』というのが橋下家の家訓」と話していたが、大学生が「年収103万円の壁」を気にするのは自身の所得税以上に親の特定扶養控除への配慮が大きそうだ。 こうした状況に鑑み、「令和7年度税制改正大綱」には「年収103万円の壁」の引き上げ絡みで扶養控除や特定扶養控除の見直しも盛り込まれている。 まずは扶養控除が受けられる親族の年収を現行の103万円から123万円にアップした上で、特定扶養控除の対象となる大学生の子供には「特定親族特別控除」を新設。控除が受けられる子供の年収のボーダーラインを150万円まで拡大し、150万円を超えた後もいきなり控除がなくなるのではなく、段階的に控除額を減らしていく仕組みを導入する。 これにより、控除額は子供の年収が160万円であれば51万円、170万円なら31万円となり、188万円を超えるとゼロになる。 扶養する側への影響が大きいのは、「配偶者控除」も同じだ。 現行制度では、扶養者は配偶者のパート収入が150万円までであれば38万円(満額)の控除が受けられる。パート収入が150万円を超えた場合は「配偶者特別控除」が適用され、収入に応じて控除額が段階的に縮小されていき、201万円超でなくなる。 ただし、配偶者控除には特定扶養控除と決定的に異なる点がある。