これではファンも悲鳴…日本のプロサッカーは三大会が錯綜して複雑怪奇すぎ!
選手のプレーにも影響が…
戸惑いがあるのは、ファン、サポーターだけではないようだ。 I神戸は、皇后杯の5回戦で、低迷する「ちふれASエルフェン埼玉」(リーグ戦9位)と対戦して大苦戦。延長戦まで戦うことになったI神戸のジョルディ・フェロン監督(スペイン人)は、苦戦の原因をこう説明した(最終的には3対2で勝利)。 「先週末、長崎でクラシエカップの準決勝があった。決勝進出を目指して選手たちは集中して戦って勝利した。すると、中5日でこんどは別のカップ戦で埼玉県熊谷市まで移動だ。熊谷は空港から遠いので移動が大変だ。肉体的疲労もあったが、それよりもメンタル的な疲労が大きかった」 もう少し補足すると、I神戸は12月1日のリーグ戦で、セレッソ大阪レディースと対戦して1対2で敗れている。今シーズンの初黒星で首位の座を手放した。つまり、フェロン監督は3週連続で3つの別の大会を戦う難しさを言いたかったのだろう。 監督は「こんなスケジュールはスペインでは経験がない」と言ったが、スペインだけでなく、日本でも3つの大会が錯綜(さくそう)するのは異例のことだ。昨年はリーグカップ(今年から「クラシエカップ」)はリーグ戦開幕前に行われたし、来シーズンからはもっと遅い時期(皇后杯終了後)に変更になる。 一方、「3強」の一角、浦和レッズ・レディースは、12月8日の「クラシエカップ」準決勝でサンフレッチェ広島レジーナと対戦。2点差を追いついて延長戦に持ち込んだものの、最終的に2対3で敗れた後、中2日でリーグ戦の試合があった。浦和は今シーズンから始まったアジア・チャンピオンズリーグのグループステージが10月にあったため、その間のリーグ戦の試合が延期になっていたのだ。 大事な準決勝を延長戦の末に落としただけに、中2日のC大阪戦では肉体的にも精神的にも疲労が大きく、なんとか2対1で勝利したものの、内容的には散々の出来だった。
さらに複雑化が進む懸念も
個々の大会の日程も大事だが、年間を通してのスケジュールは非常に重要だ。それは、戦う選手や監督・コーチにとっても、そしてサポーターにとっても同じだ。 そして、問題は女子だけの問題ではない。男子のスケジュールもかなり複雑化してきているからだ。 男子のJリーグは、2月に開幕して12月まで行われる。そして、並行してカップ戦も開催され、11月の初めにリーグカップ(YBCルヴァンカップ)決勝がある。その後、天皇杯の準々決勝以降があって、元日に天皇杯決勝というスケジュールが長く続いていた。 ところが、この数年、日本代表チームの活動などの理由で、天皇杯決勝が元日ではなく、11月や12月に行われることが多くなった。今年は、特別な理由はなかったのに天皇杯決勝は11月23日だった。そして、YBCルヴァンカップ決勝が11月2日だったから、女子ほど複雑ではなかったものの、立て続けに同じ国立競技場で2つの決勝戦が行われた。 女子の場合、来シーズン(2025年秋から26年春)は、2つのカップ戦は別の日程で行われるのだが、男子の場合は、これからどうなるのだろうか? というのも、男子も2026年からいわゆる「秋春制」に移行するからだ。2026年8月に開幕して翌2027年5月までリーグ戦が続く。その間に行われる2つのカップ戦の日程については、今のところ正式発表はない。天皇杯決勝は、リーグ戦終了に合わせて5月か6月に行うのか?それとも、冬のリーグ戦中断を利用して年末(または元日)に行うのか?さらに、YBCルヴァンカップの決勝をいつに設定するのか。 とにかく、選手にとってもサポーターにとっても分かりやすくしてほしい。不都合があればすぐに変更するというのはもちろん正しいことだが、ただ、毎年のように日程が変更になってはますます難解になってしまう。 主催者側には“大人の事情”もいろいろおありだろうが、サポーターや一般のファンにとって、リーグ戦と2つのカップ戦があるサッカーのスケジュールは分かりにくい。そのことを考慮して、今シーズンの女子の日程の重複も参考にしながら、慎重に検討してもらいたいものだ。
後藤 健生(サッカージャーナリスト)