信州に最後の春の名残り 白樺湖のレンゲツツジ
今年は平年よりやや早く、6月の1週目に全国的に梅雨入りした。長雨の後にはいよいよ暑い日本の夏が始まるが、ちょっと待ってほしい。信州の高原では、まだ最後の「春の名残り」を見ることができる。山の斜面や湖畔のそこかしこに、レンゲツツジのオレンジ色の花が「もう少し待って」と懸命に花をつけ続けている。八ヶ岳山麓・蓼科高原の白樺湖畔で、そんな“列島最後の春”を撮った。(内村コースケ/フォトジャーナリスト)
高原を彩るオレンジ色のツツジ
レンゲツツジは、北海道南部から九州にかけて、おもに高原や中山間地に咲くツツジの一種。街路樹として都市部によく植栽されているヒラドツツジの鮮やかな濃いピンクに比べ、落ち着いたトーンのオレンジ色の花が特徴だ。蓼科高原では、標高1000メートルから2000メートル付近の山の斜面や稜線、湖畔などで広く見られる。毎年5月下旬ごろから咲き始め、6月上旬が見頃となっている。
筆者は東京から白樺湖の近くに移り住んで5年目になるが、蓼科高原の春と夏の訪れは、東京のちょうど1か月遅れだと感じている。地元の人たちは蓼科の気候を表現する際によく北海道の旭川あたりと同じくらいと言うから、この地のレンゲツツジが咲く光景は、概ね「日本列島最後の春」の一つと言っても差し支えないだろう。長野県には、ほかにもレンゲツツジの名所が数多くあり、隣接する群馬県では県花になっている。
水辺と草原が織りなす絶景スポット
白樺湖は、標高1416メートルの人造湖で、湖畔に遊園地やホテル、温泉施設などが並ぶ観光地だ。ふもとの中央高速道・諏訪インター方面から観光道路の「ビーナスライン」が、白樺湖を経由してさらに上の車山高原・霧ヶ峰まで伸びており、絶好のドライブスポットとしても有名。その名の通り、周囲には白樺の木が多く、白い幹とオレンジの花、新緑と抜けるような青空のコントラストが、高原の爽やかな春を演出する。
その光景を撮影したのは、関東甲信で梅雨入りが宣言された3日後。蓼科では6月に入ってから日中は曇り空、夕方から明け方にかけてポツポツ雨が降るという天気が続いていたが、この日は午後から晴れ間が広がった。爽やかな春の光景を撮影する最後のチャンスとばかりに、撮影機材一式を入れたリュックを掴んで車に飛び乗った。