信州に最後の春の名残り 白樺湖のレンゲツツジ
白樺湖周辺では、湖畔に点々と咲く水辺のレンゲツツジと、取り囲む山の斜面に広がる草原を彩るオレンジ色を同時に楽しむことができる。白や紫の花を咲かせる草花や高山植物も負けじと咲き誇る。観光施設の周辺では、植栽されたピンクや黄色の他の種類のツツジも見られた。厚手の長袖シャツでちょうど良いくらいの気候。再び雲が空を覆う前に、夢中でシャッターを切った。
春の終わり、夏の訪れ
そうやって写真を撮っていると時間が経つのは早いもので、湖畔の広場では、いつの間にか林間学校に来ている中学生たちがキャンプファイヤーの準備を始めていた。山の方からゆっくりと雲が迫る。夕方の淡い暖色の光の中で、レンゲツツジのオレンジが一層色濃くしっとりと浮かび上がった。
午後6時を過ぎた頃、夕焼けの代わりにポツポツと雨粒が落ちてきた。湖畔のレンゲツツジの株の下に、役目を終えた花びらが落ち始めていた。春の終わりを感じながら、最後の一枚を撮る。梅雨が明けると、車山高原にはニッコウキスゲが咲く。オレンジがニッコウキスゲの黄色と入れ替わるのが、夏の訪れの合図となる。
■内村コースケ(うちむら・こうすけ) 1970年生まれ。子供時代をビルマ(現ミャンマー)、カナダ、イギリスで過ごし、早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞(東京新聞)で記者とカメラマンをそれぞれ経験。フリーに転身後、愛犬と共に東京から八ヶ岳山麓に移住。「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、「犬」「田舎暮らし」「帰国子女」などをテーマに活動中