9条以外で「改憲連合」も? 参院選3分の2届かず
「3分の2」確保へ野党の切り崩し狙う?
今後の政局の見通しについて、まず憲法改正は進むだろうか。 安倍首相は選挙直後のテレビ出演で「憲法改正の議論を行うべきだというのが国民の審判だ」との趣旨のことを述べた。与党勝利は憲法改正の議論を進めることに対して有権者がゴーサインを出したと解釈できるというわけである。「任期中になんとか国民投票まで実現したい」とも発言している。 選挙前は、与党に加えて維新と数人の無所属議員からなる改憲勢力はかろうじて3分の2議席を超えていたが、今回の参院選で3分の2を割ってしまった。参院で憲法改正の発議を行うためには、改憲に賛同する議員をもっと増やさなくてはならない。 そのため、安倍首相は、これまでの改憲勢力に国民民主なども加えて、いわば「改憲連合」を形成することを企図しているようにみえる。野党の切り崩しを行い、3分の2を確保して改憲のための連合を作り出したいのではないだろうか。首相はしばしば「国民民主党にも改憲に前向きな方はいる」と発言しているが、同党の改憲賛成派に誘いをかけているかのようである。 また、選挙翌日の22日の会見でも「新たに登場した政党もあるし、当選した無所属の議員もいる」などとも述べている。 ただし、国民民主は、現状では9条に自衛隊を明記する案に反対の立場である。また、連立与党の公明党は9条改正に消極的である。以上から考えると、9条以外の項目で改憲を目指す方向になる可能性も高いように思われる。首相は22日に「自民党案にこだわらず柔軟な議論をする」と述べているが、これは9条以外での改憲を示唆したようにも取れる。あるいは、国民民主の主張を踏まえ、9条を同党が賛成できる表現にする可能性を念頭に置いているのかもしれない。いずれにせよ、どの項目であれ改憲の実績を作れば、憲法改正を成し遂げた総理として歴史に名を残すことは間違いないだろう。 ちなみに、憲法改正についての各党の立場は以下のとおりである。自民は、9条への自衛隊明記、緊急事態条項、参院選の合区解消、教育充実といった4項目の改憲たたき台を提案している。公明は、憲法の基本は維持する「加憲」の姿勢であり、9条改正は慎重に議論されるべきとの立場である。 野党についてみると、立憲民主は、9条改正に反対しており、首相の衆院解散権の制約や知る権利の尊重など国民の権利拡大の観点から議論を進めるとの立場である。国民は、9条については自衛権行使の限界を曖昧にしたまま自衛隊を明記することには反対するとの立場であり、その他は立憲と同様に解散権制約などを議論するとしている。共産は9条改正自体に反対し、前文を含む現行憲法の全条項を維持する立場である。維新は、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所設置の3項目を提案しており、9条改正にも反対しないとの立場である。 こうした各党のスタンスの違いが、今後の憲法改正論議にどう影響していくか注視したい。