元ヤクザが告白「私は山口組四代目を暗殺後、39年間捕まらずに生き延びた男を知っています」「一泊2日の旅行もしました」
組内では「太郎のオジキ」と呼ばれていた
懲役氏によれば当時のヤクザは、どこか出かけるにしても“ヤクザがやってきました”と周囲にわかるように振る舞っていたという。組長が店に入れば数人の組員が並んで店の前に立ち、店の前に停車している一般車はすべて移動させる。 だが、組長はその男にだけは一般客に紛れて目立たないように会うのが常だったという。 「誰であるかは我々に一切明かしませんでした。名前すら言わないのです。一般社会で上司がそんな行動をしていたら、『あの人何者なんですか』と聞くでしょう。けど、我々の世界ではそういうことはしない。組長が何も言わずに怪しい行動を堂々と続けているのだからワケがあるはず。それを察しなければならないのです」 懲役氏は組長が出かける先にその男がいても、何も考えまいと努めたと言う。そして2人が食事したり酒を酌み交わす姿を見守り続けた。 やがて、その男は組内で「太郎のオジキ」と呼ばれるようになったという。 「名無しという意味での太郎です。オヤジがそう呼ぶようにと言った記憶があるのですが古い話なので自信がありません。カシラが言い出して定着したのかもしれない。いずれにしろ、組長が兄弟分として扱っている人に、下っ端の人間が気安く呼びかける機会なんてありませんので、名前を知らずとも問題はありませんでした」
刑務所に行っている間に姿を消した
そうこうしているうちに、懲役氏は務めを果たしに2年間刑務所に行くことになった。刑期を終えて戻ってくると、まだ組長はその男と会っていたという。だがしばらくしてまた事件を起こし、戻ってきた時には姿が見えなくなっていたという。 「2度目の懲役は4年間でしたが、私が出所する1週間前に組長は射殺されて亡くなった。同時に男との接点も消滅しました」 懲役氏は男が何者かを知るまで、さらに数年の時を待たなければならなかった。 後編では懲役氏が「謎の客人」の素性を知ることになった経緯と、たった一度きりだが男と会話する機会を持った「2人きりの一泊2日旅行」について取り上げる。(文中、呼称略)
デイリー新潮編集部
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