<上海だより>悲惨な労働環境の“闇”──激戦、中国宅配業界の配達員事情
中国配達業者に対するストレスから感じる日本の過剰サービス
THE PAGE
日本の宅配業界問題の解決にはしばらく時間がかかりそうですが、筆者が数年ほど暮らしている中国から見ていると、宅配便配達員とのやり取りでは必ずと言っていいほどストレスを感じ、やはり日本の宅配サービスの質の高さを実感する機会が非常に多いです。 そもそも、タオバオなど中国で主流のネット通販での購入時に配達時間の指定ができず(購入後、一部の商品は配達先を管轄内とする集配センター到着時に翌日以降での日時指定が可能だが、常に配送状況を確認しておく必要がある)、平日の昼間に配達員から連絡が入るため、会社員では当然受け取れません。 また、不在票というシステムもなく、再配達は配達員との電話でのやり取りを通じてお願いするのですが、昼間の担当者は、「夜間は配達しない」と一点張りの上に「じゃぁ、どうするんだ?」となぜかこちらに対して攻撃的なため、翌日も出勤で日中不在の場合はもうお手上げです。 最悪の場合、配達員は下の階や隣の部屋の人に渡しておく、近所の店に渡しておく、などの強硬手段を自らの都合で選んできますので、帰宅後に詫びを入れながら近隣の人から受け取るということもありますし、ある時は配達員の判断によって勝手に返品されていたということもあります。そうしたこともあり、中国の会社員たちは勤務先を受け取り先に指定することもごく普通です。
6年連続前年比50%超えの成長、驚異の中国宅配業界
ここで、日本と中国の宅配便業界の規模感を比較してみたいと思います。まず2015年の両国における宅配便の件数ですが、日本の約36億3700万個に対して、中国は約206億7000万個、2016年では約313億5000万個と、6年連続前年比50%成長という驚異の速度で成長しています。 また、業界全体の売上も約4005億元(約6兆4000万円)に達しており、こちらも同様に前年比約45%の数字で成長はしています。一方で、日本が約2兆円程度で市場規模が推移していることを考えると、現時点での中国の宅配業の売り上げは取り扱い件数に対しては低く、単価も低いと考えられます。では、宅配業界は人件費に依存する労働集約型として知られていますが、中国ではどうやって産業を支えているのでしょうか。