コーチ就任から桑木志帆初優勝までの「5カ月間」を、コーチ目線で振り返る【中村修が振り返る「桑木志帆の躍進」・中編】
なにかヒントになればと向かった先で、タイガー・ウッズやローリー・マキロイの練習ラウンドについて歩き、松山英樹のパット練習を見終わると「もう練習に行きたい」と言い出したのです。早々に引き上げ拠点に戻って熱のこもった練習を開始。その後もトレーニングと打ち込み、パッティング練習を暗くなるまで続け、みるみる調子を上げていきました。 しかし、帰国して1週間後に迎えた開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」では初日を77(93位タイ)と出遅れ、2日目には予選カットラインまであと1打まで戻すも後半にダボ・ボギー・ダボと崩れ7オーバーで予選落ち。 ショットやパットの調子の問題ではありません。前年をランク10位で終え、新しいスポンサーにも恵まれた若い選手が、開幕戦にどんな気持ちで挑む必要があったのか。そこまでを見越して仕上げ切ることができなかったことを、コーチとして大いに反省する開幕戦でした。 翌週の「明治安田生命レディス」は初日と2日目まで6位タイで終えましたが、3日目の9番でバンカー越えのピンを狙った一打がバンカーのアゴにつかまり目玉となってダブルボギー。気持ちの立て直しをできず、後半は2つスコアを落としてしまいます。 思うような結果を出せず、ミスした自分を責めて引きずる桑木に「ミスは誰にでもある。反省はラウンドが終わってから。焦らなくても必ず成績は出る」と門田実キャディと3人で2時間近く話し合い、最終日に向かいました(結果は35位タイ)。 ゴルフは個人競技ですが、キャディ、コーチ、トレーナーが一体となり、チームとして選手を支えることの大切さが身に染みた瞬間でした。転ばないように手を差し伸べるのは簡単ですが、大事なのはどうすれば転ばずに済むか、転んでも立ち上がる気持ちを選手が自分で考えることです。ベテランの門田キャディに助けられながら、序盤戦は焦ってあれこれアドバイスしないようにしていました。