コーチ就任から桑木志帆初優勝までの「5カ月間」を、コーチ目線で振り返る【中村修が振り返る「桑木志帆の躍進」・中編】
その効果は2週後の「リゾートトラストレディス」で3位タイと早速表れます。翌週の「ヨネックスレディス」でも5位タイと、ショットとパットが噛み合うことが多くなっていきました。 全英女子オープン行きのチケットがかかった「サントリーレディス」では体調不良の影響もあって1打足りずに予選落ち。悔しさのあまりラウンド後に練習を始めると、チームに止められるまで打ち続けていました。 翌週の「ニチレイレディス」では練習日に今度はピンのパター「PLDアンサー2」との出合いがありました。これまでも練習グリーンで打たせたことはありましたが「このパターは打感が良い」とこれまでに聞いたことがなかった打感の良さを口にしたことから、それなら距離感も良くなるはず、と早速投入。初日に1イーグル4バーディの6アンダーと結果を出し、首位タイスタート。 トレーニングの成果で体力が上がって来たこともあり、ドライバーのシャフトを「ディアマナBB」に変え、3Wは「ディアマナWB」の50Sにチェンジするなど、ギア面のフィッティングも着実に進んでいました。最終日に伸ばせずに終わったものの収穫は大きい試合だったんです。 そして2週後の「資生堂レディス」でついに歓喜の瞬間が訪れます。一年前、プレーオフで敗れて悔し涙に暮れた試合です。 初日に7バーディノーポギーの2位に2打差の首位発進を果たすと、2日目悪天候中止を挟んで迎えた3日目の第2ラウンドで首位と1打差の2位タイにつけ、最終日は69で2日目トップの堀琴音をかわし、「忘れ物を取りに来た」と昨年のリベンジを果たし、プロ初優勝をついに手にしたのです。 最終ホールでニアサイドからのアプローチを寄せ切れたのは、アプローチ専門の永井直樹コーチに練習日にアドバイスを受けたおかげ。試合会場に来る機会があればアドバイスをしてもらいたいと頼んでおいたことが功を奏し、ラフからのアプローチの技術向上に大きく役立ちました。
桑木志帆の初優勝は、私にとっての“コーチ初優勝”でもありました。初優勝の喜びを共に味わうことができ、コーチとして最高の景色を見せてもらったことに感謝しかありません。 初優勝というひとつ目の目標を達成し、シーズン中盤以降は複数回優勝、そして昨年のポイントランク(10位)を上回るため、安定した成績を出し続けることが新たな目標となっていきました。 シーズンの最後にあんな結末を迎えることになろうとは想像もしていませんでした。桑木は我々が考えるよりも早く、そして大きく成長していくことになるのです。 (後編に続く)
プロゴルファー・中村修