銚子でイルカウォッチングと雄大な太平洋の眺めに心躍る
港町の風景を楽しみ犬吠埼(いぬぼうさき)へ
銚子電鉄の外川(とかわ)駅やその周辺は、古い港町ならではの風情が漂う。駅舎は1923年に開業した当時のもので、構内にもレトロな雰囲気が残る。駅から歩き出すと、細い道から坂の向こうに海を見渡せる。そんな景色を眺めながらのんびり歩いているだけで楽しい。 外川漁港周辺に点在する食事処では、新鮮な海の幸を味わえる。江戸時代は「外川千軒大繁盛」と言われるほどの好景気を支えたという。梅雨時にかけて旬を迎えるイワシや、キンメダイ漁の北限と言われる漁場で手釣りで水揚げされる「銚子つりきんめ」など、豊富な魚種を提供している。 ジュラ紀(約2億年~1.5億年前)に形成されたと推定される犬岩や千騎ケ岩(せんがいわ)など、地学的に興味深い名所もあり、足を延ばしてみたい。
絶景ポイントもある。北総地区(千葉県北東部)で一番高い標高73.6メートルの愛宕(あたご)山の頂に立つ「地球の丸く見える丘展望館」は、その名の通り屋上から圧倒的な景色が見渡せる。330度水平線(残り30度は地平線)が見えることをうたっており、悪天候ながら地球の丸さを感じ取ることができた。 旅の終わりは1874年の初点灯以来、日本の海の安全を守ってきた犬吠埼灯台。国の重要文化財に指定され、世界灯台100選の一つにもなっている。99段のらせん階段を上ると、太平洋が眼下に広がり、「ザッパーン」という豪快な波音も聞こえる。東映映画のオープニング映像で有名な「荒磯に波」は、この岩場で撮影したそうだ。千葉の東端まで来たという何とも言えない達成感を味わえた。 それにしても、時とともにますます強まる雨。ゴールの犬吠駅に着いた時には、靴もリュックもずぶ濡れだった。好天の日に再訪しようと、心に誓った。 文/安部晃司 写真/青谷 慶ほか ※「旅行読売」2024年6月号の特集「駅から歩こう1万歩」より