人生は自分で決め、自分で歩くもの」偶然の出会いを成長につなげたてきた元ラグビー女子日本代表の玉井希絵さん【働くって何?③】
校長は驚いた様子で「自分の娘やったら反対する」とあきれられた。周囲の反対も押し切り、自らの意思で退路を断った。 社会人チームのスポンサー企業に移り、毎日午前9時から午後2時まで働き、その後はラグビーに集中。恵まれた環境が整い、念願の日本代表に選ばれた。 ▽落ち葉拾いで転職を決意 その一方で、葛藤を抱えていた。代表の合宿で1、2カ月不在にすることもあり「会社もどういう仕事をさせたらいいのか難しかったと思う」と振り返る。資料をコピーしたりシュレッダーにかけたりといった単純作業が多かった。 ある時、やることがなく、上司に「何かできることがありますか?」と聞いた。「落ち葉がいっぱいやったから掃除して来て」と言われ、落ち葉を拾いながら考えた。「自分はこのままでいいのか。引退したら、その後のキャリアをどうするのか」 東京五輪に向けて人材サービスのパソナグループが女性アスリートのキャリア形成を支援していると知り、転職を決めた。「自分が競技を続けながら活動すれば、他のアスリートにもいい影響があるんじゃないか」と思った。
入社後、名古屋に配属された。「自分自身を広告塔としてメディアとの関係づくりをする」というミッションを与えられ、新聞社やテレビ局に売り込みをかけた。パソナ社員としてラグビーに打ち込む活動ぶりを記事や番組で取り上げてもらい、社会人としても成長した。 ▽子どもを育てながらプレーできる!? 2022年、ニュージーランドで開催されたラグビーW杯への切符を手にした。本大会では1次リーグで敗退したものの、大会前の国際試合でアイルランドや南アフリカ代表に勝利するなど手応えを感じた。ただ、強豪のニュージーランド代表には95対12と大敗し、力の差も感じた。「世界のトップチームには歯が立たず、こんなに差があるんやなと思った」 そうした時、世界トップクラスのイングランド代表選手と話す機会があり、その競技環境を聞いて驚いた。 試合会場には観客が詰めかけてビジネスとして成り立ち、プロ選手もいる。医者をしながらプレーする選手がおり、子供を産み育てながら続けられる環境があると言われ、「何それ!」と衝撃を受けた。